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2019 年度 実施状況報告書

励起芳香族性の解明を目指した歪み4π電子系分子の合成と開殻分子への展開

研究課題

研究課題/領域番号 18K05073
研究機関広島大学

研究代表者

中本 真晃  広島大学, 理学研究科, 准教授 (90334044)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード典型元素化合物 / 反芳香族性 / 高歪み分子 / シクロブタジエン / 開殻系分子 / シグマ共役
研究実績の概要

高歪み炭素σ結合からなる「テトラヘドラン」と,その原子価異性体である「シクロブタジエン」を研究対象とし,光や電子移動などで誘起される分子変換について,実験的な研究を行っている。ケイ素やリンやホウ素などの典型元素置換基,あるいは鉄やコバルトなどの遷移金属置換基を導入した反応活性種を,単離可能な分子へと導き、構造と反応性を調査してきた。特異な分子構造および電子構造に及ぼす典型元素の影響について研究を進めている。高歪みσ電子系からなる分子骨格は,結合歪みに起因する特異な電子状態となり,高い反応性を示す分子群を構成する。そこで従来法を改良して,高歪みσ電子系とπ電子共役系とを融合させ反芳香族分子を作り出す方法を確立することができた。「高歪みσ結合」「励起芳香族性」「non-ケクレ ジラジカル構造」をキーワードに研究を進めている。シクロブタジエンの反芳香族性の回避をドライビングフォースとした開殻系分子の合成,構造解析,物性の詳細について検討を続けている。
ホウ素置換基を導入したシクロブタジエンでは,ジアリールボリル基とジアミノボリルき基を導入したシクロブタジエンの合成単離に取り組んだ。分光学的手法によって観測,および捕捉反応により生成は確認したが,現在単離を検討中である。ホウ素置換体の合成過程において,光増感材とLewis酸との付加体について活性種の構造解析に成功し,固体での発光挙動について明らかにすることができた。これは,光エネルギーの活用により高反応性分子を作り出す研究への発展が見込まれ、反芳香族分子のより深い理解に寄与する結果と考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、様々な高歪み結合からなる分子を構築し、光による物質変換および高歪み電子系の物性解明を目指して、現在までに以下の実験を中心に成果を得ている。(1)ホウ素置換基を導入したテトラヘドランからシクロブタジエンへの光誘起原子価異性化、(2) 置換シクロブタジエンの構造解析と共役系分子における反応性の解明(3)反芳香族分子をドライビングフォースとした開殻分子の構築である。
シクロブタジエンは、4パイ反芳香族分子であり、D4h対称(正方形)では二重縮退したパイ軌道をもつ。そのため同じサイズの共役系分子と比較しても高い反応性を示すことが知られている。これまでシクロブタジエンの分子構造、電子構造、反芳香族性に関連する研究は盛んに行われてきたが、安定な化合物として単離された例は少ない。イスラエル工科大学のApeloig教授との共同研究により,熱励起三重項の中性シクロブタジエンでのESRシグナルの観測により,実験的に一重項ー三重項エネルギーギャップを決定することができた。π共役系拡張シクロブタジエンの合成では,ビニレン架橋誘導体において,特異な異性化および電子環状反応,付加環化反応が進行することを見出した。2019年度の関連する国内学会で発表した。

今後の研究の推進方策

隣接するπ系との軌道相互作用が、シクロブタジエンの電子状態に及ぼす置換基効果を明らかにする。またテトラへドランからシクロブタジエンへの熱異性化は軌道対称性禁制であるが、実際には 比較的低い活性化障壁を超えて熱異性化しシクロブタジエン誘導体になることは知られているものの、異性化のメカニズムは未だに解明されてはいない。4つのシリル基で置換すると活性化障壁は大きく上昇し、速度論的に安定であるが、アリール基の導入によって熱異性化反応は加速されるのか、また異性化のメカニズムは理論化学の予想と一致するのかを検討する。異性化の中間体にはビシクロ-1,3-ビラジカル構造が推定されており、物理化学の専門家との共同研究を行う。
特にホウ素置換誘導体において,興味深い現象が見つかっており,Lewis付加体における電子授受のメカニズム解明と,それに続く固体物性の精査を共同研究により推進していく。

次年度使用額が生じた理由

当初計画よりも物品費にかかった経費が見積もりより少なくなった。これは,既存の設備を利用することができたことや,より経済的な購入計画によって節約ができたからである。また計画していた国際学会への参加を見送ったことで,旅費も当初計画のおよそ30%程度になった。しかし,翌年度分として請求する助成金の合計は,当該年度所要額のうち30%以下であり,計画に大きな変更はない。翌年度分に繰り越された助成金は,引き続き化学合成に必要な試薬などの購入費に充てる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The Substituent Effect of Bridged Triarylamine Helicenes on Light-emitting and Charge Transfer Properties2020

    • 著者名/発表者名
      Yan Chenting、Shang Rong、Nakamoto Masaaki、Yamamoto Yohsuke、Adachi Yohei
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 49 ページ: 457~460

    • DOI

      10.1246/cl.200089

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bis(diphenylphosphinyl)-functionalized dipyrido-annulated NHC towards copper(I) and silver(I)2019

    • 著者名/発表者名
      Sihan Zhang, Rong Shang, Masaaki Nakamoto, Yohsuke Yamamoto, Yohei Adachi, Joji Ohshita
    • 雑誌名

      Dalton Trans.

      巻: 48 ページ: 12250-12256

    • DOI

      10.1039/C9DT02435B

    • 査読あり
  • [学会発表] 光異性化によるホウ素置換基を有するシクロブタジエンの合成2019

    • 著者名/発表者名
      今川大樹・中本真晃・稲垣佑亮・関口章・Shang Rong・山本陽介
    • 学会等名
      第46回有機典型元素化学討論会
  • [学会発表] π共役拡張型シクロブタジエンの合成と反応性2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木啓太・Shang Rong・中本真晃・山本陽介・岡庭健斗・小林譲・関口章
    • 学会等名
      日本化学会中国四国支部大会 徳島大会
  • [備考] 有機典型元素化学研究室

    • URL

      https://home.hiroshima-u.ac.jp/hetero2/

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公開日: 2021-01-27  

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