研究課題/領域番号 |
18K05074
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
狩野 直和 学習院大学, 理学部, 教授 (00302810)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ケイ素 / ホウ素 / 硫黄 / 化学結合 / 超原子価化合物 |
研究実績の概要 |
官能基の高周期元素類縁体と超原子価化合物の開発は、現在の有機元素化学の重要な研究テーマの一つである。本研究はそれら両方を融合した課題として高配位元素で構成される新結合を創出し、その反応性を解明して新官能基を創り出すことを目的として検討を行った。今年度は5配位ケイ素-ホウ素結合をもつ化合物の合成を目指し、種々の検討を行った。ケイ素上の配位子として、5配位ケイ素化合物を安定化し得る電子求引性の二座配位子を用いた。DFT計算により5配位ケイ素-ホウ素結合をもつ化合物の構造最適化を行い、目的化合物が安定構造をもつことを確認した。次に、合成方法として(1)ケイ素化合物の還元により反応系中で発生させたケイ素ジアニオンとホウ素化合物の反応、(2)ボリル銅試薬とルイス酸性の高いケイ素化合物の反応、(3)クロロシリカートとクロロボラートの還元的カップリング反応、(4)NHCまたはホスフィンが配位したヨードボランの還元で調製した求核的ホウ素試薬とケイ素化合物の反応、(5)クロロシリカートとシリルボランの不均化反応を検討したが、いずれの場合も5配位ケイ素-ホウ素間結合をもつ化合物の合成には至らなかった。そこで、ホウ素の代わりに比較的電気陽性な元素として硫黄を選び、5配位ケイ素-硫黄結合をもつ化合物の合成を行った。ルイス酸性の高いケイ素化合物に対してチオラートアニオンを作用させることにより、ケイ素-硫黄結合を有する5配位シリカートを合成した。生成物は空気・水に対して不安定であり、容易に加水分解が進行したが、熱的には安定な化合物として合成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5配位ケイ素-ホウ素結合をもつ化合物の合成に向けて、予定通り合成の検討をおこなった。ケイ素-ホウ素結合の合成には至っていないが、合成が困難であることは想定の範囲内である。ケイ素上の置換基として、ホウ素の代わりに硫黄を用いた場合には安定な5配位ケイ素化合物の合成に成功しており、比較的電気陽性な元素であっても、安定な化合物として合成できることを見いだした。このように、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ケイ素-リン結合およびケイ素-ホウ素結合をもつ化合物の合成には至っておらず、その原因として立体混雑の影響と求核性の低さが考えられる。そこで、ケイ素やリンの代わりに、原子半径がより大きな同族高周期元素を活用することで、安定な高配位原子間結合の構築をおこなうこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ケイ素-ホウ素結合化合物の反応性解明のための薬品購入に使用する予定であったが、目的化合物の合成に至らなかったため、その薬品を購入する必要がなくなった。翌年度分の研究で使用する高周期元素を含む薬品の購入に使用する計画である。
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