研究課題/領域番号 |
18K05075
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
平野 誉 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20238380)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生物発光 / ホタル / ウミホタル / 酸素化 / 化学励起 / ルシフェリン / オキシルシフェリン / ルシフェラーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、ホタルとウミホタルの生物発光系を対象に、3つの鍵反応過程(①酸素化、②化学励起、③発光色制御)の反応機構を解明し、生物発光の高性能化要因の解明を目指した。 ①酸素化過程については、ホタルルシフェリン誘導体として、酸化電位を調整するために置換基変換したものを合成し、酸素分子と同様の酸化力を持つ電子受容性化合物との反応を検討した。この結果、酸素化のモデル反応となる付加反応を見出した。合成基質の酸化電位測定と反応速度の解析までを行い、結果を学会発表した。学術論文報告の準備を進めている状況にある。 ②化学励起過程については、ウミホタル生物発光系のモデル反応を検討した。ルシフェリン誘導体として嵩高い置換基を有するものを合成し分子内立体障害が中間体の配座を規制することを狙った。誘導体の化学発光量子収率を測定し、その化学励起効率を解析したところ、立体障害の効果が得られることを見出した。さらに、DFT計算による中間体の配座と分解遷移状態の電子的性質を調査して、反応機構の確立に結び付けたい。 ③発光色制御機構については、ホタル発光系について検討を進めた。酵素ルシフェラーゼ内での発光体分子の励起状態の安定性の調整が鍵を握るため、発光体と類似分子構造をもつ化合物について、酵素内包状態の蛍光性に関する知見を得ることとした。この結果、酵素の微小な構造変化で内包された化合物の蛍光性が変化することを見出した。さらに、発光体アナログを系統的に合成し、発光体分子自身の蛍光性を評価するための基盤を整えることができた。ホタルルシフェリンアナログの酵素内での発光特性評価と発光体を模倣した蛍光色素の物性について、共同研究による成果報告を行った。上記の研究の有機合成においては、導入した示差屈折計を含むリサイクル分取クロマト装置を活用して、化合物の精製を効率化できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホタルとウミホタルの生物発光系を対象とする3つの鍵反応過程(①酸素化、②化学励起、③発光色制御)に関する検討で、それぞれについて反応機構に関する重要な知見が得られた。具体的に、①酸素化機構についてはホタル発光系を題材に、ルシフェリン誘導体と電子受容性化合物の付加反応を構築することができ、このモデル反応と酸素化反応の反応速度論の対応も付きつつある。②化学励起機構については、ウミホタル発光系のモデルとなる化学発光において、嵩高い置換基を有するルシフェリン誘導体を用いた検討で分子内立体効果による化学発光量子収率への影響を見出すことができた。いずれも機構解明に直結する知見であり、今後の研究を進める基盤となった。③発光色制御機構については、ホタル発光系について、発光体オキシルシフェリン自身と酵素ルシフェラーゼに関する多角的な検討を進めることができた。発光中心である発光体の分子構造と分光学的性質の相関に関する知見と共に、発光色調整に関わる酵素活性部位が溶液条件に依存して物性変化を示す知見が得られており、反応機構の全体像を把握しながら研究が進んでいる。以上より、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ホタルとウミホタルの生物発光系を対象に、引き続き3つの鍵反応過程(①酸素化、②化学励起、③発光色制御)の反応機構解明を目指して研究を進め、生物発光の高性能化要因の確立を目指す。 酸素化機構については、ホタル発光系で見出された酸素化のモデル反応を確立すると共に、モデル反応と酸素化反応を対比しながら反応機構を確立する。さらに、この酸素化機構の概念を他の生物発光系にも拡張、適用して、酸素化反応機構の一般性を検証する。②化学励起過程については、ウミホタルルシフェリン誘導体の化学発光で得られた分子内立体効果に関する知見の一般性を検証すると共に、DFT計算も取り入れた高エネルギー中間体の分解過程と配座に関する情報を収集し、これを化学励起効率と相関させて評価することで反応機構の解明につなげる。③発光色制御機構については、発光体オキシルシフェリン自身の精密な分子構造と分光学的性質の相関を確立する。同時に、発光色調整に関わる酵素ルシフェラーゼの活性部位内の分子環境物性について、活性部位内にアクセス可能な化合物の内包時の蛍光性の評価に基づいて情報を収集する。このとき、酵素の溶液条件を系統的に変化させたときの活性部位内の分子環境変化を利用する。得られた知見は、ルシフェリンとそのアナログの生物発光特性およびルシフェラーゼの結晶構造の情報と照らし合わせて評価することで発光色制御機構の解明を目指す。
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