研究実績の概要 |
Gaussian 09 (京都大学サイトライセンス)を用い、合成が既に達成されている、①シラベンゼン、②ゲルマベンゼン、③1,2-ジシラベンゼン、④1,2-ジゲルマベンゼン、⑤1,4-ジゲルマベンゼンについて種々の計算方法、基底関数を用いて、(1)構造最適化、(2)GIAO計算、(3)TDDFT計算を行った。これらの結果をそれぞれ (1)X線結晶構造解析、(2)NMR測定、(3)電子スペクトル測定、の実験結果と比較し、計算手法と基底関数の適合性を評価したところ、ケイ素やゲルマニウム上にはリアル系に近い置換基を導入する効果は大きく、Hやメチルなどのモデル置換基では再現性が悪かった。また、構造最適化に関しては、B3PW91-D3/3-21G*基底関数を用いても十分再現することがわかった。NMR等各種スペクトルの再現にはTPSSTPSS、基底関数には、トリプルゼータ系の基底関数を用いることが必要であることが分かった。特に、1,4-ジゲルマベンゼンの系では、CASSCFを用いることで分子構造が実験結果をよく再現することがわかり、ビラジカル性の寄与をもつことを明らかとした。以上の様に、ケイ素やゲルマニウム上の置換基効果は分子構造に大きく影響を与えるため、立体的影響や電子的影響を考慮したモデルを設計する必要があることがわかった。これらの結果から、今後、未踏の高周期14族元素を含む芳香族化合物についての計算を行う際の方法論が確立できた。
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