研究課題/領域番号 |
18K05091
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
川瀬 毅 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (10201443)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 含窒素ナノグラフェン / 縮合多環状共役系化合物 / アゾメチイイリド / アザフェナレン / 有機発光物質 / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
ナノグラフェン骨格に窒素原子を導入することで高い電子特性(半導体特性や酸化還元能など)が期待される。しかし、これまで窒素原子を含む化合物はあまり研究されていなかった。申請者は、高いジラジカル性や酸化還元能をもつ分子としてアザフェナレニル構造をもつ共役系化合物やその関連化合物を合成の標的化合物として研究を行うことを着想した。申請者は先にアセナフチレン-5,6-ジカルボキシイミドを出発原料にπ拡張フルオランテンイミド類を合成し、その性質を報告しているが、それをさらに発展させ、新規骨格をもつジイミドやデカシクレンモノイミドを合成している。さらにパラジウム触媒を用いた新規酸化的三量化反応を開発することでデカシクレントリイミドも合成した。これらの化合物は、特異な発光特性や分子会合などの興味深い性質を示す化合物である。ナフタレンイミド骨格はヒドリド還元によってアザフェナレニルへ変換可能であることが知られている。2-置換-2-アザフェナレニルは反応性の高いアゾメチンイリドユニットをもつ化合物であり、反応中間体としてその存在が確認されているのみであった。そこで、適当な立体保護によって安定な化学種として単離することを目的に、5,8位にt-ブチル基と2位に2,6-ジイソプロピルフェニル基を導入することで、2-アザフェナレニル誘導体を熱的には安定な緑色の結晶性化合物として単離することに成功した。この化合物は極めて酸素に敏感な化学種であったが、グローブボックス中で生成・単離操作を行なうことができた。アゾメチンイリド誘導体として初めて単離された化合物である。X線結晶構造解析により構造を決定し、各種スペクトルによって電子状態の解明を行なった。これらの研究をさらに発展させることで、アザフェナレニル骨格を持つ多様な含窒素共役系化合物の合成が可能になるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
適当な立体保護によって安定な化学種として単離することを目的に、5,8位にt-ブチル基と2位に2,6-ジイソプロピルフェニル基を導入することで、2-アザフェナレニル誘導体を熱的には安定な緑色の結晶性化合物として単離することに成功した。この化合物は、これまで反応中間体としてのみ、その存在が確認されていたアゾメチンイリド構造をもつ化合物であり、世界で初めて分子構造や各種スペクトルによりその電子的性質を明らかにすることができた。この化合物は極めて酸素に敏感な化学種であったが、グローブボックス中で生成・単離操作を行なうことができた。X線結晶構造解析によりアゾメチン部位の結合角や結合距離は相当するピリジニウムイオンの相当部位と大きな違いはないことが示されたが、電気化学的測定によって、非常に高い電子供与性を示し、非常に高いHOMOをもつことが、高い反応性を示す理由になることが明らかとなった。このけんきゅうによって、アゾメチンイリド構造をもつ含窒素芳香族化合物の構築方法や安定化の方法が明らかとなり、今後さらなる発展が促されるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は先にアセナフチレン-5,6-ジカルボキシイミドを出発原料にπ拡張フルオランテンイミド類を合成し、その性質を報告しているが、それをさらに発展させ、新規骨格をもつジイミドやデカシクレンモノイミドを合成している。さらにパラジウム触媒を用いた新規酸化的三量化反応を開発することでデカシクレントリイミドも合成した。これらの化合物は、特異な発光特性や分子会合などの興味深い性質を示す化合物である。ナフタレンイミド骨格はヒドリド還元によってアザフェナレニルへ変換可能であることが知られている。2-アザフェナレニル誘導体の合成方法や性質を応用することで、さらに多様な含窒素共役系化合物の合成が可能になるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
高精度分析天秤の購入を計画していた機種が値上がりのため、購入することができず、それに準ずる性能を持つ機種に変更して購入したため、その分の費用が約40万残額として残った。研究が進展し、論文を投稿受理された。現在別刷購入代金の支払いが残っているため、約10万ほど使用する予定である。また、現在、論文を作成中であり、原稿校正・別刷購入のため、その他経費の残りとともに30万は使用する予定である。旅費の使用が少ないのは、当該学会が日帰りで参加できる場所で開催されたため、10万ほど残った。来年度はまた、宿泊が必要な学会や国際学会に参加する予定のため、全額使用する予定である。
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