研究課題/領域番号 |
18K05092
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
長谷川 真士 北里大学, 理学部, 講師 (20438120)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キラル化合物 / π共役系化合物 / CDスペクトル / 円偏光発光 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
π共役系の発色団をキラルな環境下に配置すると、π共役系の特徴を活かしたキラル光学特性を示す。本研究ではπ共役系分子をラセン状に配置する分子設計で、顕著な円偏光発光を示す新しい色素分子の創成を目指した。これまでに、1)面不斉をもつシクロファンや、2)軸不斉をもつビナフチルを基盤としてπ拡張した二重ラセン構造や環状構造を合成し、分子構造とキラル光学特性(CDおよびCPLスペクトル)について調査した。 1)面不斉をもつシクロファンから拡張した二重ラセン 擬オルト[2.2]パラシクロファン(PC)よりオリゴフェニレンを伸長させた化合物を合成し、共役長とキラル光学特性の相関を明らかにした。面不斉PCにビフェニルおよびターフェニルを導入した化合物では、CDやCPLスペクトルにおいて、いずれも強いコットン効果を示した。しかしながら、異方性因子であるg値は共役系が短い化合物の方が高い値(およそ0.004)を示した。この知見を環状構造へ拡張し、新しくシクロファンで架橋されたオリゴフェニレン化合物を合成した。 2)軸不斉をもつビナフチルから拡張した二重ラセン 新しいキラルなπ共役系化合物の創成の中で、7,7'-ジブロモ-1,1-ビナフチル誘導体の効率的な光学分割方法を見出した。これを利用することで新しく、二重ラセンや環状構造をもつキラルなπ共役系分子の合成を開拓できた。Ni触媒を用いたカップリング反応では、環状のオリゴマー(2-5量体)が生成した。そのうち、二量体は二重ラセン構造をもつ。全てのオリゴマーで強いCPLスペクトルを示したが、その符号と強さは絶対立体配置よりもナフタレン環の二面角に依存することがわかった。これは、キラル分子の励起状態の構造とCPLスペクトルを反映したものであり、その相関を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り[2.2]パラシクロファンを中心とした二重ラセン構造の構築を行い、実際にこれを達成した。一方で、新しくビナフチルを環状につなげたキラル分子の創成にも挑戦したところ、効率的な合成法を見いだすことができた。新しく合成した環状分子のうち、2つのキラルなビナフチルが繋がった分子は二重ラセン構造をもつ。この化合物の円偏光発光スペクトルを測定したところ、高いg値を示すことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
[2.2]パラシクロファンを利用した二重ラセン構造の構築を進める。当初の目的通りの化合物の合成に成功しており、キラル光学特性についてまとめたのちにまとめる予定である。また、ビナフチルを用いた二重ラセン構造を新たに計画しており、これを推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他機関にて出張測定の予定があったが、台風並びに豪雨のために出張を断念した。測定の一部を次年度改めて出張し、測定する予定にした。
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