研究課題/領域番号 |
18K05095
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
靜間 基博 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究室長 (40416318)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キラリティー / 質量分析 / 分子認識 |
研究実績の概要 |
本研究課題では高感度分析法である質量分析のみでキラル分析を達成することを目的としている。キラル分析を行うために質量分析で観測が容易となる種々の分子認識システムを構築することが必須となる。本年度は昨年度に引き続き、重要なキラル化合物群であるアミノ酸類とカルボン酸類を分析するキラルホスト類としてキラル金属錯体を選択した。新たに側鎖構造の異なるアミノ酸を選出してそれを原料にキラル四座配位子を合成した。そして銅(II)を中心金属とした際に第2の配位子としてアミノ酸が配位する際のエナンチオ選択性を質量分析で定量評価した。質量分析で評価するためにホスト(金属錯体)もしくはゲスト(アミノ酸、カルボン酸)のエナンチオマーの一方を重水素で同位体標識して質量差を与えた。そのため、ぞれのエナンチオマーを含むホスト‐ゲスト錯体を質量分析で区別して検出できた。十分に錯形成平衡系が競争条件になる条件下で、エレクトロスプレーイオン化質量分析で検出された錯イオンの相対強度値が安定して得られ、溶液中の錯形成定数の比とよい一致を示すことも確認できた。錯形成平衡系でできる他の化学種と分離できるので、目的のイオンの挙動だけを選択的に評価できた。複数のアミノ酸を含む試料を用いた際に、イオンサプレッションなどのマトリクス効果がほとんどなくキラル選択性が評価できることを見出した。これはクロマトグラフィーなどの分離工程を一切活用せずに質量分析だけで迅速に光学純度を評価する方法に活用できる。 キラルアミン(ゲスト)に対する分子認識系としてポリエーテルホスト系を合成した。高速原子衝撃質量分析で得られるホスト‐ゲストの錯イオン挙動から、錯安定度係数を決定できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から引き続き計画していたキラルホストの合成は、金属錯体系、ポリエーテル系ともに目的どおり行うことができ、質量分析によるキラル分析に必要な立体構造的特徴などの今後につながる知見を得ることができた。また、複数のキラルゲストを同時に分析する手法も可能性を見出すことができた。金属錯イオン系においてはキラル識別機構なども明らかにできた。一方で、中性分子ゲストをターゲットとしたホスト系はまだ有力な構造を見いだせていないので、引き続き、重要課題として進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究の進捗状況は順調であるので、概ね当初計画どおりに進めていく。 アミノ酸およびカルボン酸に対するキラル金属錯体を用いた系についてはほぼ計画を達成したので、質量分析では難しい中性分子(ゲスト)をターゲットとしたホストの構築を進める。現在までにピラーアレーンとの錯体を質量分析(エレクトロスプレーイオン化法)で検出できているので、その高感度化と高いキラル識別能を目的として新しいホスト分子の合成に取り組み、本研究の目的を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
キラル金属錯体およびポリエーテル系の質量分析によるキラル分析が計画以上に進展した。中性分子をターゲットとした系に関してはまだ十分な実験を進められていない。そのために次年度使用額が生じた。今年度に中性分子をターゲットととしたキラルホスト系の構築のため、合成や分析にかかわる物品費で使用する予定である。
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