研究課題/領域番号 |
18K05096
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
美多 剛 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (00548183)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 固定化反応 / 脱芳香族化 / ダブルカルボキシル化 / フラン / ピロール / パラジウム / 極性転換 |
研究実績の概要 |
昨年度は「求核的π-アリルパラジウム中間体を経るカルボキシル化」を2-インドリルメタノール誘導体に適用したところ、脱芳香族化によるカルボキシル化が効率良く進行し、ベンジル位とインドール3位の両方がカルボキシル化されたダブルカルボキシル化体が効率良く得られることを見出した。そこで今年度は、基質検討の一環としてフルフリルアセタートや、インドールのベンゼン環を除去した2-ピロリルメチルアセタートを基質としてダブルカルボキシル化反応を行った。その結果、これら単環性ヘテロ芳香環においてもダブルカルボキシル化が効率よく進行した。しかしこれらの場合、ベンジル位とインドール5位の両方が反応したジカルボキシル化体が選択的に得られることがわかった。通常の選択性であるベンジル位と3位のダブルカルボキシル化ではなく、ヘテロ芳香環の共役を通して一回目のカルボキシル化が進行し5位のカルボキシル化体が得られたことは特筆に値する。本触媒系では、中間体として生成するエノールやエナミン中間体から2回目のカルボキシル化が進行していると考えられる。また、芳香族性の高いチオフェンではほとんど反応せず、チアゾールを用いた場合には脱芳香環化によるカルボキシル化は進行せず、ベンジル位でのカルボキシル化が選択的に進行した。ナフタレンや電子求引性の置換基を有するベンジルアセタートを用いた場合でもカルボキシル化は進行したが、この場合もベンジル位のモノカルボキシル化に留まった。これらの結果を包括する合理的な反応機構を提案し、速報誌として発表した(Synlett 2019, 30, 841-844.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フルフリルアセタートや2-ピロリルメチルアセテタート誘導体に対してCO2雰囲気下パラジウム触媒を用いるカルボキシル化を行うことで、ベンジル位および5位との両方がカルボキシル化された化合物が選択的に得られることがわかった。これまでに例を見ない脱芳香族化を伴う遠隔位置でのカルボキシル化に成功した。反応機構としては、まず初めに基質がゼロ価パラジウムに酸化的付加を起こしπ-アリルパラジウム種が生成すると予想される。この中間体にジエチル亜鉛が作用することで、求核的なσ-アリルパラジウム種が生成する。続いて、このσ-アリルパラジウム種が脱芳香族化を伴いながらフラン、ピロールの5位でCO2と反応することで、一回目のCO2の導入が完了する。このカルボキシル化の過程により生成した求核的なエノール、もしくはエナミンから2回目のカルボキシル化が進行することで、2つ目のCO2が導入されると考えている。本結果は既に報文として発表している(Synlett 2019, 30, 841-844.)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにインドール、フラン、ピロール誘導体を用いるダブルカルボキシル化の検討が一通り終了した。最終年度である2020年度は、ヘテロ芳香環以外の基質に本ダブルカルボキシル化を適用し、基質一般性の高いダブルカルボキシル化反応の開発を目指す。また、芳香族性を示すベンゾフランの炭素-酸素結合の開裂を伴うダブルカルボキシル化反応の検討も実施し、これまでに例を見ない触媒的ダブルカルボキシル化反応の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗の都合により、購入予定の試薬類を用いた実験を次年度実施することとなったため。
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