研究実績の概要 |
芳香族求電子置換反応は、芳香族化合物を合成する上で現在欠かすことのできない役割を担っている。しかし、多種多様な芳香族化合物の需要が高まりつつある中、芳香族求電子置換反応だけでは合成することが困難な芳香族化合物が多数存在する。 本研究では、鎖状化合物の位置選択的合成が芳香族化合物の位置選択的合成よりもはるかに容易であるとの考えに基づき、芳香族化するための仕掛けを施した鎖状基質からこれまでにない機能を有する縮合環芳香族化合物の合成を目指した研究を展開してきた。具体的には、我々が独自に開発した閉環反応を利用するFerroco-DMAPのエナンチオ選択的合成法の開発と1,1-ジアリールエテンと分子硫黄を反応させて[1]ベンゾチオフェノ[2,3-b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)誘導体を得る新たな反応の開発を行ってきた。 最終年度は、Ferroco-DMAPのエナンチオ選択的合成法に関する研究で見出した閉環反応を応用することで、4-quinolone誘導体の新たな合成法の開発を目指して研究を実施した。4-quinolone誘導体には、生理活性物質が多く、特に医農薬業界で重要な化合物が多数存在している。 結果としては、目論見通りに研究が進展し、我々がFerroco-DMAPの合成研究で見出した新たな閉環反応が、4-quinolone誘導体の合成にも応用できることが分かった。また、一部基質においては共通の原料から、反応条件を変えるだけで、別の重要な含窒素複素環芳香族化合物である(Z)-4-alkylidene-3-oxindoleが得られることも分かった。本合成法を利用することで、様々な4-quinolone誘導体および(Z)-4-alkylidene-3-oxindole誘導体の合成を達成することができる。
|