研究課題/領域番号 |
18K05105
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
竹中 和浩 香川高等専門学校, 一般教育科(詫間キャンパス), 講師 (20423113)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パラジウム触媒 / エノラート / 極性転換 / カルボニル化合物 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
カルボニル化合物は、カルボニル基の持つ特徴的な反応性とそれに基づいた官能基変換の容易さから有機合成化学の中心的役割を担っている。これまでに確立された合成手法の中でも、カルボニル基固有の求電子性を変化させ求核種として用いる「極性転換」は、有機分子の合成戦略に画期的な変革をもたらした。そこで本研究では、求核剤として振る舞うエノラート種の極性を転換させ、医薬品などへの応用が期待されるα位官能基化カルボニル化合物の新規合成技術創出を目指す。すなわち、炭素-炭素結合形成などの触媒過程で生じたパラジウムエノラート中間体に対して、通常反応しない求核剤を作用させカルボニル基α位の官能基化も同時に行うドミノ型プロセスを開発する。 平成31年度(令和元年度)は、これまでに見出してきた触媒的パラジウムエノラート極性転換反応の有用性を更に高めるべく,本プロセスに利用できる新規求核剤の探索研究を行った。具体的には、α位に硫黄官能基をもつカルボニル化合物は生物活性を示すものも少なくないため硫黄求核剤を種々検討した。その結果、パラジウムエノラート中間体形成の契機となる、炭素-炭素多重結合への求核剤の攻撃と続く環化段階までを円滑に進行させる反応条件を見つけたものの、生じたパラジウムエノラート種に対する極性転換型求核攻撃は確認できなかった。おそらく、硫黄求核剤がパラジウムに配位することで金属中心の電子密度が高まったため望みの極性転換反応が起きなかったと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の異動に伴い、研究環境が大幅に変化したことと新しい業務への対応に多大な労力を要したことから,令和元年度は本研究に従事する十分な時間を確保できなかった。そのため研究の進捗は遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
触媒的パラジウムエノラート極性転換反応の有用性を高めるため、引き続き適用可能な求核剤の精査や基質構造の展開を図る。また、本プロセスが実際にパラジウムエノラート中間体を経由しているかを検討するため、錯体化学的・計算科学的アプローチによる反応機構の解明を推し進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動に伴い新業務への対応に多大な労力を要したことから、本研究に従事する十分な時間を確保できなかったため。研究期間の延長も視野に入れている。
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