研究課題/領域番号 |
18K05110
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
末木 俊輔 武蔵野大学, 薬学部, 助教 (90580118)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Z型配位子 / 触媒反応 / 水素移動型反応 / レドックス異性化 / リンスルフィド / Z型配位子錯体 |
研究実績の概要 |
本研究は遷移金属錯体に対して、強いσ受容性を示すZ型配位子を新たにデザイン・合成し、触媒的有機合成反応への応用を目指すものである。Z型配位子錯体はL型およびX形配位子錯体とは異なり、高いLewis酸性を有することが期待されるため、その特異な触媒活性を示すことが期待される。 昨年度において得られた知見を基に、当初の研究計画を変更して、今年度はリン配位部位を有するZ型配位子合成に特に注力し、研究を行った。平成31年度における研究において、合成ルートを確立した軸不斉モノホスフィン配位子を用いて、ハロゲン化ホウ素やボランとの反応を検討したが、いずれの場合も生成物であるホウ素化合物が安定ではないためか、反応は全く進行しないか、複雑化する結果を与えた。しかし、Z型配位子合成法の検討過程で、新規なリンスルフィド合成法を見出した。 また一昨年度の研究において見出したルテニウム触媒とカルボジイミドによるアルコールの脱水素型酸化反応に関して、その研究成果を学術論文としてまとめることができ、さらにその発展内容として、レドックス異性化反応に関する予備的知見を得ることができた。これらの研究により得られた知見等は、Z型配位子錯体を用いた触媒反応検討に関してもそのモデル反応として利用できるなど、本研究課題の遂行・発展に十分生かすことができるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は令和元年度の研究成果を踏まえ、本年度では合成計画の見直しを行ったが、計画通りには当該研究課題は進行しなかったものの、「研究実績の概要」でも記述したようにその研究過程で新規なリンスルフィド合成法を見出し、また一昨年度報告したルテニウム触媒とカルボジイミドによるアルコールの脱水素型酸化反応を発展させ、レドックス異性化反応に関する予備的知見も得ることができた。しかし、本年度は現在も猛威を振るう新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、大学のロックダウンにより、研究活動自体が停止あるいは大きく制限されていたため、思うように研究を遂行することが出来なかったため、研究計画自体は遅れている。しかし、限られた研究活動の中でも上述のように学術的に興味深い知見を得ることができ、本研究課題の今後の遂行に際し、有益な情報となることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、上述のように新型コロナウイルス感染症拡大に伴う研究活動の自粛により、研究計画に大きな後れが生じてしまったため、既に1年間の研究計画の延長を申請・承認していただいた。そこで、令和3年度では、令和2年度までの知見を踏まえ、引き続き本研究課題である検討するとともに、Z型配位子合成計画の見直しも図っていく。すなわち、Z型配位子の電子受容部位を窒素またはリン配位部位との相互作用をしにくいホウ素以外の元素(アンチモンなど)に変更することで配位子の安定性を高めることで、合成が達成できるものと推察しており、今後検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、令和2年度は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う研究活動の自粛に伴い、研究および学会活動は大幅に制限されたため、次年度使用額が発生した。こちらは研究機関延長申請により承認された令和3年度に繰り越すことを計画している。
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