研究課題/領域番号 |
18K05111
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 謙之介 北里大学, 薬学部, 准教授 (40467874)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光増感 / 電子移動 / プロトン移動 / 2-アザアリルラジカルカチオン / 多重結合性分子 |
研究実績の概要 |
①ジアミン誘導体に光増感触媒を添加し光照射を行ったところ、2-アザアリルラジカルカチオンもしくはその等価体が発生後ニトロンと[3+3]光付加環化を起こし新規オキサジアジナンが得られた(収率22%-65%)。NMRによる反応追跡を行なった結果、中間体が観測され構造を精査したところ想定している化学種が発生していることは確実であった。反応量子収率算出にも成功し熱的なラジカル連鎖機構の関与はないことが分かった。 ②-1:①の反応について全14例の実施例を示すことができた。(論文執筆中)②-2:多重結合性分子としてα,β-不飽和化合物を用いると[3+2]光付加環化反応が進行しγ-ラクタム誘導体が得られ(NMR収率50%-80%、単離収率4%-29%)全5例の実施例を示すことができた。本反応を用い抗うつ薬および慢性疼痛治療薬前駆体の短工程合成を達成した。(論文執筆中)②-3:多重結合性分子としてイミンも用いると[3+2]光付加環化反応が進行し新規イミダゾリジン誘導体を複数合成できた。既に反応条件の最適化が完了しており基質一般性を検証中である。(H31年内論文報告予定)②-4:多重結合性分子としてアルデヒドも用いることもできたが、もう少し精査が必要である。 ③北里大学理学部との共同研究において、CV、DPV、電解反応、消光実験を行いその結果をもとに②-1の反応を共著で論文を執筆中である。工学院大学教育推進機構との共同研究では、ラジカルの反応性に関する理論計算を行いその結果をもとに②-1の反応を共著で論文を執筆中であり、本研究課題と関連するアルケンの[2+2]光付加環化反応の論文を1報共著で報告済、1報共著で投稿済である。②-2、②-3の反応についても、共著の準備を進めている。 ④新規光増感剤を創出し、①、②-1、②-2、②-3の反応の発展と応用および新展開としてその他の新奇光反応を開発できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①ニトロンとの形式的[3+3]光付加環化では、有機合成実験、分光実験の結果を合わせて考え反応機構を提示できるだけの結果を得ることができた。しかし2-アザアリルラジカルカチオンもしくはその等価体のどちらが発生しているのか、もしくは両者が同時に発生しているのかは直接的に証明できていない。 ②多重結合性分子の反応部位として、炭素-窒素二重結合2種類、炭素-炭素二重結合1種類、炭素-酸素二重結合1種類、合計4種類の多重結合との反応に成功し様々な複素環の新規合成法を開発できた。また得られた複素環のうち新規化合物である割合が高かった。 ③共同研究について、得られた成果を共著として報告できる状態にすることができた。また、共同研究者の人的ネットワークに入ることができ、異分野の研究者との議論を交わす機会を得ることができた。 ④新規光増感剤は緩和な条件で反応を行うことができるため、原料の分解を抑え抗うつ薬および慢性疼痛治療薬前駆体の短工程合成を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
①ニトロンとの形式的[3+3]光付加環化において、レーザー分光分析による過渡吸収スペクトルの測定を行い、2-アザアリルラジカルカチオンもしくはその等価体のどちらが発生しているのか、もしくは両者が同時に発生しているのかを直接的に証明する必要がある。同時に、理論計算による反応経路のシミュレーションも必要である。 ②多重結合性分子として、アルデヒド(C=O結合)、ケトン(C=O)、ニトリル(C≡N)、チオカルボニル(C=S)などと反応させバリエーションを増やす必要がある。 ③共同研究について、一つでも多くの成果を共著論文として報告するためにさらに密な連携をはかる。共同研究者の人的ネットワークに積極的に入り、本研究の異分野への展開に挑戦する。 ④新規光増感剤を用いる反応について、医薬品候補化合物の創製に応用する。
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