研究課題/領域番号 |
18K05113
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
片山 秀和 東海大学, 工学部, 准教授 (30580857)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タンパク質逆スプライシング反応 / プロテアーゼ / Native chemical ligation |
研究実績の概要 |
本研究で目的としているタンパク質逆スプライシング反応は、酵素によるトランスペプチダーゼ反応と、化学的なペプチド縮合反応を一つの反応系中で行うことによって達成できる。そこでまず、触媒として用いるリシルエンドペプチダーゼによるトランスペプチダーゼ活性の検証を行った。モデルとなる短鎖ペプチドを化学合成し、それを基質としてグリシルグリシンに対してペプチドの転位が進行するかを確認した。研究費の申請当初、溶媒としてイオン液体が適切であると期待していた。しかし、種々のイオン液体を溶媒として検討したが、イオン液体中ではまったく反応が進行しなかった。そこで、水や種々の有機溶媒を添加して反応を検証したところ、エチレングリコールが添加剤として有効であり、エチレングリコール、イオン液体、および少量の緩衝液の混合液中で目的とするトランスペプチダーゼ活性を検出することができた。また、下述のように別のモデルペプチドを用いた検証によって、この溶媒中でペプチド縮合反応の一種であるNative Chemical Ligation (NCL)反応が進行することも確認することができた。 NCL反応の進行の有無を確認するにあたり、反応モデルとしてダニの唾液由来糖タンパク質Evasin-3を化学合成することにした。66アミノ酸残基からなるEvasin-3の配列を3つのセグメントに分割してそれぞれ固相合成し、NCL法により縮合した。ジスルフィド結合を形成することによってEvasin-3を得た。表面プラズモン共鳴によって、合成Evasin-3がケモカイン結合能を有していることが確認できた。これは、Evasin類の初めての全合成と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2年目(2019年度)に短鎖ペプチドを基質としてタンパク質逆スプライシング反応を達成することになっている。当初の期待と異なりイオン液体中で反応が進行しなかったが、溶媒を含めた反応条件の検討が概ね計画通りに進行し、トランスペプチダーゼ活性による反応と、化学的なペプチド縮合反応(Native Chemical Ligation、NCL)が同一の溶媒系で進行することが確認できた。このことから、短鎖ペプチドを基質としてタンパク質逆スプライシング反応は2019年度中に達成できる目処がたったといえる。 一方、当初の計画には無かったが、NCL反応のモデルとして、Evasin-3の化学合成を達成することができた。この糖タンパク質はケモカイン結合能を有し抗炎症作用を示すことから、種々の炎症性疾患の治療薬への応用が期待されている。Evasin-3の化学合成ができたことによって、今後の治療薬開発の土台となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の核となる2つの反応が同一の溶媒中で進行することが確認できたことから、今後は当初の計画通り短鎖ペプチドをモデルとしてタンパク質逆スプライシング反応が実際に進行するかどうかを検証することとする。基質濃度や触媒濃度等を検討することによって、2019年度半ばまでに目的とする生成物が得られる条件を見出すとともに、収率の向上を目指す。 収率の向上が見られれば、より長鎖のペプチドを基質とした反応を検討する。そのために、反応点となるLys-Cys配列以外のLys残基のみを保護する方法の開発を目指す。Cys側鎖に近傍のLys側鎖を保護できる官能基を導入した保護基を導入した後に、残りのLys残基を保護、続くCysの脱保護によってLys-Cys部位のみを選択的に無保護状態に導くことを計画している。まずは、その保護基導入試薬の開発を目指すこととする。 NCL反応が水をほとんど含まない溶媒中で進行するという知見は、非常に興味深いものである。すなわち、水中では行うことのできない種々の反応をNCL反応とone-potでできる可能性を示すものである。今後、他のペプチド縮合反応や糖鎖導入反応などとNCL反応を組み合わせた新たな(糖)タンパク質化学合成法の開発についても検討していく。
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