研究課題/領域番号 |
18K05115
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
永縄 友規 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00613233)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クロロシラン / ニッケル / パラジウム / アルミニウム / クロスカップリング / 酸化的付加 / 選択的 |
研究実績の概要 |
本研究では、シリコーンモノマーなどとして工業的に量産される安価なクロロシラン(とくにジまたはトリクロロシラン類)に対する有機金属化学試薬による従来の有機基導入法とは全く異なる反応性・選択性の獲得を目指して、ケイ素―塩素結合の遷移金属触媒への酸化的付加を経由する活性化と触媒的分子変換への応用を検討している。 昨年度、ニッケル触媒を用いたジクロロシランおよびトリクロロシランとトリアルキルアルミニウムとのクロスカップリング反応を論文発表した(ChemCatChem 2019, 11, 3756.)。本手法は温和な条件下で反応が進行し、ジまたはトリクロロシラン類に対して1つあるいは2つのアルキル基を選択的に導入することが出来る。そのため、従来法である反応性の高い有機金属試薬を用いる反応と比較すると、アルキルモノクロロシランの選択的合成が可能である。しかしながら、クロロシランのケイ素に対して芳香族置換基の導入が必須であるなど基質一般性の面では改善の余地があった。 そこで今年度は、ニッケルの同族元素であるパラジウム触媒の利用可能性について主に検討を行ったところ、Bachwald配位子を含むパラジウム触媒を用いることによって、ジまたはトリクロロシラン類とアルキルアルミニウム類との反応が円滑に進行し、対応するアルキルモノクロロシランが選択的に得られた。パラジウム触媒を用いることによって上記の基質一般性の問題は大幅に改善され、シリコーンモノマーとして大量生産されているジメチルジクロロシランや、テトラクロロシランなどから選択的にトリアルキルモノクロロシランを合成することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々のこれまでの検討においては、トリシクロヘキシルホスフィンを有する電子豊富なニッケル触媒を用いた場合にのみ、クロロシランのケイ素―塩素結合の触媒的分子変換を行うことが可能であった。しかしながら今年度の検討の結果、パラジウム/Buchwald配位子錯体がクロロシランの選択的変換反応に対して有力な触媒候補となることを新たに見出すことができたため、研究計画全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
新しく見出したパラジウム触媒を用いるクロロシランと有機アルミニウム試薬とのクロスカップリングについては、結果をまとめたうえで論文発表する。 その後はさらに幅広いカップリングパートナーを、クロロシランの触媒的分子変換へと適用可能とすることが今後の研究の推進方策となる。ニッケル触媒を用いて各種カップリングパートナーの検討を行ってきたが、現在のところ良好な結果は得られていない。一方で、パラジウム触媒を用いることによってニッケル触媒とは異なる反応性が見込めることから、最終年度となる3年目はパラジウム触媒を用いるクロロシランと各種クロスカップリングパートナーとの反応を精査することで基質一般性の獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通りに予算執行したが、消耗品費に関してわずかに差分が生じた。次年度の消耗品費として予算余剰分を繰り越し充当する予定である。
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