研究実績の概要 |
本研究では、シリコーンモノマーなどとして工業的に量産される安価なクロロシラン(とくにジまたはトリクロロシラン類)に対する有機金属化学試薬による従来の有機基導入法とは全く異なる反応性・選択性の獲得を目指して、ケイ素―塩素結合の遷移金属触媒への酸化的付加を経由する活性化と触媒的分子変換への応用を検討している。 これまで電子豊富なニッケル触媒を用いたクロロシラン類の触媒的な有機基導入反応を検討してきたが、昨年度にパラジウム触媒を用いることが可能となった。具体的には、Bachwald配位子、とくにDavePhos配位子を含むパラジウム触媒を用いることによって、クロロシラン類の塩化ジメチルアルミニウムによるメチル化反応が円滑に進行した。ケイ素中心に対する選択的なアルキル基導入反応は、オレフィン類とのヒドロシリル化反応が用いられてきたが、ヒドロシリル化反応では原理的に不可能なメチル基の導入反応となる。 さらに本反応では、ジ、トリ、テトラクロロシランから対応するメチルモノクロロシラン類が選択的に得られ、古典的な有機リチウム試薬などによる求核付加反応では得難い選択性を獲得することができた。また、これまでにほとんど報告例のなかったテトラクロロシランに対する触媒的有機基導入反応を実現することができた。 以上、本反応について基質適用範囲などをさらに精査し、今年度論文として成果発表することができた(Org. Lett. 2021, 23, 601-606.)。
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