研究課題/領域番号 |
18K05116
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤田 健志 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60603066)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フッ素 / 触媒 / 有機合成化学 |
研究実績の概要 |
炭素-フッ素結合は安定な結合であるため、これを切断しながら化学変換を行うのは困難とされてきた。これに対して、金属を用いるフッ素脱離や酸を用いるHF脱離に注目し、穏和な反応条件下でのC-F結合活性化法を開発した。 まず、フルオロアルケンを基質とすることで、典型金属によるβ-フッ素脱離による5-endo-trig環化を達成した。フルオロアルケンの反応性を利用することで分子内反応の経験則であるBaldwin則において通常起こり難いとされる5-endo-trig環化に成功し、付加価値の高い含フッ素ヘテロ環化合物を合成することができた。この成果は、学術論文2件として報告を行い、その価値が認められて雑誌の裏表紙にもなった。 次に、フルオロアレーンやフルオロペンタジエンを基質とすることで、酸によるカップリングあるいは電子環状反応を見出した。ここでは、フッ素のα-カルボカチオン安定化効果を利用することで、酸によるプロトン化やフッ化物イオンの脱離によってカルボカチオン中間体を発生させ、続く炭素-炭素結合形成を促進した。フルオロベンゾフランとアレーンのカップリングとジフルオロペンタジエンのNazarov型環化を開発した。 さらに、近年冷媒としての利用が期待されているヒドロフルオロオレフィンの反応にも取り組み、予備的な成果を得ている。ヒドロフルオロオレフィンは、入手容易な含フッ素ビルディングブロックであり、ここから有用な含フッ素化合物を合成できれば重要な手法となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題として当初提案した大きく分けて3つの課題のうち、「金属を用いるβ-およびα-フッ素脱離や酸を用いるHF脱離の新規活用法」について幅広い種類の新反応を見出した。したがって、本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、(i) 金属を用いるβ-およびα-フッ素脱離や酸を用いるHF脱離の新規活用法、とともに、(ii) 金属を用いた遠隔位フッ素脱離、(iii) フッ素転位を用いたフッ素多置換環構築、といった炭素-フッ素結合活性化の新手法の開発を目指している。今後の方針として、(i)については成果を学術論文や特許としてまとめ、(ii), (iii)については新反応の発見を目指す。
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