研究実績の概要 |
1) D-A シクロプロパンの不斉転写開環ー環化反応により得られる二つの中心不斉を有するアリールジヒドロナフタレンから軸不斉の身を有するアリールナフタレンへの DDQ 酸化による不斉変換反応を見出した。この反応における、アリール基上のオルト位置換基の有効半径と軸不斉における ee との関係についても詳細に調べた。その結果、ベンジロキシ基の場合には、低温下で高い ee での不斉変換を達成した。[T. Saito, Y. Shimizu, Y. Araki, Y. Ohgami, Y. Kitazawa, Y. Nishii, Eur. J. Org. Chem. 2022, e202101213. (DOI: org/10.1002/ejoc.202101213)]
2) D-A シクロプロパンの高立体選択的かつ高位置選択的な還元的開環反応を開発し、この反応を鍵反応として、抗 B 型肝炎ウィルス活性を有するリグナン天然物 (-)-ニランシン及びその対掌体 (+)-ニランシンの不斉合成を達成した。合成した対掌体のB 型肝炎ウィルス及びインフルエンザに対する活性試験を行なった。生物活性試験の結果から、B 型肝炎ウィルスに対しては両対掌体間で活性の差はなかったが、インフルエンザウィルスに対しては (-)-ニランシンが抗ウィルス活性を示し、(+)-ニランシンには活性が認められなかった。すなわち、B 型肝炎ウィルスはニランシンのキラル中心の構造ではなくアキラルな芳香族環周辺の構造が、インフルエンザウィルスではキラル中心の構造が活性サイトになっていると考えられ、学術的に重要な知見を得たと言える。[R. Ota, D. Karasawa, M. Oshima, K. Watashi, N. Shimasaki, Y. Nishii, RSC Adv. 2022, 12, 4635. (DOI: 10.1039/d2ra00499b)]
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