本研究では,α-ケトエステルやニトロエステルの立体選択的な付加反応を鍵工程とするキラルなアミノアルコール,アミノ酸誘導体の合成経路を立案した。研究代表者がこれまでに開発したルイス酸触媒や有機分子触媒を活用する複数のアプローチを考案し,α-ケトエステル,ニトロエステルを基質とする立体選択的な付加反応の開発を行った。 1.α-ケトエステルとイミンとの不斉Mannich反応の開発:α-ケトエステルとイミンとの不斉Mannich反応を開発することを目的として,様々なルイス酸触媒,特にキラルなビスオキサゾリン配位子をもつ銅(II)触媒の活性を検討したところ,研究代表者が独自に開発したキラル銅(II)触媒が最も優れた活性を示し,Mannich付加体が良好な収率とエナンチオ選択性で得られることを見出した。また,Mannich付加体のα-カルボニル基を還元したところ,三連続不斉中心を持つγ-アミノ-α-ヒドロキシエステルが単一のジアステレオマーとして得られた。さらに,非常に興味深いことに,触媒として使用する銅(II)塩とキラル配位子との比率をわずかに変化させるだけで,反応のジアステレオ選択性を完全に逆転させることができることも明らかとなった。今回開発された不斉合成反応は,鎖状アルカロイドの不斉合成法として有効であると言える。本研究成果は,日本化学会春季年会にて発表した。 2.α-ニトロエステルとDanishefskyジエンとの不斉Diels-Alder反応の開発:本反応を促進するのに有効な触媒の設計を行い,C1対称性のキラルブレンステッド酸が優れた活性を示すことを見出した。また,得られた環化付加生成物をキラルビルディングブロックとして有用な環状アミノアルコールへと変換する方法を確立した。
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