研究課題/領域番号 |
18K05127
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆章 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70509926)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アミド / 求核付加反応 / 1,3-双極子 / ニトロン / 天然物の全合成 |
研究実績の概要 |
本研究は、「安定で官能基変換の難しいアミド基を自在に操れるか」という有機合成化学上の課題のもと、アミド基を1,3-双極子等価体として利用する合成法の開発に取り組む。具体的には、1)N-ヒドロキシアミドに対する還元的ならびに求核的ニトロン合成法の開発、2)開発した反応の多環性構造を有する含窒素天然物への応用、3)アゾメチンイリドやアゾメチンイミンなど、様々な1,3-双極子の合成へと展開し、一般性の高い方法論への拡張を目指す。2018年度に課題1を解決したので、2019年度は課題2・3に集中的に取り組んだ。 課題2:カリシフィリンBは、8つの不斉炭素を有する五環性アルカロイドであり、その複雑な構造のため、今だ全合成が報告されていない。2018年度までに開発したN-ヒドロキシアミドに対する還元的ニトロン合成法を基盤とした全合成に取り組んだ。容易に合成可能な光学活性ラクタムの窒素を直接酸化反応して、N-ヒドロキシラクタムとした。続いて、得られたN-ヒドロキシラクタムをイリジウム触媒を用いたヒドロシリル化で、還元的にニトロンへと誘導した後、ワンポット[3+2]環化付加反応により、カリシフィリンBの二環性骨格が合成できた。 課題2:ラクタムを出発原料としたニトロン合成のコンセプトをさらに展開するため、ラクタムから還元的にアゾメチンイリドを合成する手法の開発に取り組んだ。ラクタムカルボニル基のヒドロシリル化によりエナミンとした後、エノンと酸を添加したところ、Michael反応・アゾメチンイリド生成・[3+2]環化付加反応が一挙に進行することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、開発した還元的ニトロン合成法が複雑な天然物合成にも利用可能な実用的な反応であることがわかった。また、ニトロン合成法のコンセプトは、アゾメチンイリドなど他の1,3-双極子の合成へと展開できることがわかってきた。
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今後の研究の推進方策 |
還元的ニトロン合成法は、反応スケールを大きくできることがわかっており、十分量の二環性中間体が供給できる。こちらから、カリシフィリンBの全合成を達成する。 また、還元的ニトロン合成法のさらなる展開として、アゾメチンイリドに加えて、アゾメチンイリド発生法の開発に取り組む。また、開発した反応を、アスピドスペルマ類などのインドールアルカロイドに応用し、実用性を証明する。
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