研究課題/領域番号 |
18K05132
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
前川 智弘 近畿大学, 薬学部, 教授 (40363890)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 硫黄化合物 / 活性化 / 臭素化 / 塩素化 / 芳香環のハロゲン化 |
研究実績の概要 |
医薬品合成などをはじめとする有機合成においてN-bromosuccinimide(NBS)は温和な臭素化剤として広く用いられ、電子豊富な芳香環などの臭素化などが行われてきた。しかし、反応性が穏和なため、反応性としては低く、NBSに対して反応性が低下する電子不足な芳香環との反応では、反応性の高い酸や、酢酸などの酸性溶媒や、イオン性液体などの特殊な溶媒を必要としていた。 我々はこのNBSに対して、硫黄化合物であるフェニルチオトリメチルシランを硫黄化合物として用いると、NBSの反応性が変化し、NBS単独では反応が進行しない芳香環の臭素化が収率よく進行することを見出し、NBSの反応性が大幅に向上することを明らかとした。たとえばアニソール誘導体では、電子求引基であるエステル基やカルボキシ基、カルボニル基が共存しても、収率よく臭素化が進行することを明らかにした。また、フェニルトリメチルシランに比べ、固体で臭いが少ないジフェニルジスルフィドを用いても首尾よく臭素化反応が進行することを明らかにすることができた。さらにNBSの類縁体であるN-chlorosuccinimideに応用することで、NCSも同様に活性化され、NCS単独では反応が進行しない芳香族化合物に対して、塩素化が進行することを見出した。 今回、基質一般性についてさらに検討を行い、ニトロ基のような強い求引基を有するアニソール誘導体では反応が進行しないが、アルデヒド基のような求引基では反応が進行することが分かった。また、本反応の詳細を明らかにすべく、種々の臭素化剤を用いて、硫黄化合物により活性化されるかを検討したところ、分子内にN-Br結合を有する臭素化剤が活性化を受けることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年は研究室での実験が禁止された期間があり、実験の進展に大幅な遅れが見られたことと、実験禁止期間が長期間にわたった影響で再開後も元の研究活動状態に戻るまで時間がかかってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本反応の適応範囲を明らかにするとともに、反応の詳細を明らかにすることで、よりユーザーフレンドリーな反応への展開を図る。また、他の反応へと展開し、本反応系の有用性を拡大する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初の予定通り研究が遂行できなかったため。
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