研究課題
化合物に臭素を導入する方法は医薬品合成をはじめとする有機合成において幅広く用いられており、特にN-Bromosuccinimide(NBS)は穏和な臭素化剤として繁用されてきた。しかし、穏和な反応性故に、電子不足な芳香環では反応性が低下し、満足いく収率が得られないため、Lewis酸の添加や、酢酸溶媒、イオン性液体などの特殊な溶媒を用いて反応を行わなければならなかった。このような背景下、我々はこのNBSに対して、チオフェノール誘導体であるフェニルチオトリメチルシランを硫黄化合物として添加すると、NBSの反応性が大きく向上することを見出した。本法を用いることでNBSのみでは反応が進行しない、エステル基やカルボキシ基、カルボニル基等の電子求引性基を有するアニソール誘導体の臭素化反応が収率よく進行することを見出した。今回、我々は本法の基質一般性の拡大を目指し、種々の複素環化合物の臭素化を検討した。その結果、アルキル基やベンゼン環を有するイミダゾール誘導体ではNBSのみでも反応が進行し、対応する臭素化体を与えたが、フェニルチオトリメチルシランを添加することで反応性が向上し、収率の向上が見られた。一方、アセチル基を有するチオフェンやピロール誘導体では芳香環上の臭素化は進行するものの、カルボニル基α位での臭素化も進行し、単一で目的物を得ることができなかった。一方、ピリジン誘導体では反応性が低下し、フェニルチオトリメチルシランを添加しても、目的物を収率よく得ることができなかった。カルバゾール誘導体に対して反応を行ったところ、フェニルチオトリメチルシランを添加しても収率の向上は見られなかった。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年は研究室での実験が禁止された期間があり、実験の進展に大幅な遅れが見られたことと、その後の分散登校の影響もあり、元の研究活動状態に戻るまで時間がかかってしまったため。
本反応系の提要範囲の拡大を引き続き行うとともに、本反応のより簡便な手法への展開を目指し検討を行う。
新型コロナ感染症のため、当初の予定通りに研究が遂行できなかったため。次年度は当初の研究予定であった未達部分を未使用分を用いて遂行する。
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