研究実績の概要 |
Claisen 縮合は教科書有機化学である.しかし従来塩基法の反応性は類型のアルドール反応と比べ著しく低く,従ってその適用範囲は極めて限られていた.TiCl4, ZrCl4 を用いる Claisen 縮合は温和かつ非常に強力で,しかも交差型反応,不斉反応も可能である. 申請者らはこの分野の端緒から研究をリードしてきた.その一部は Organic Syntheses 誌に開発経緯のレヴューとともに再現性有る実験手法を提示している.実際,Corey 教授や Merck 社にて本反応は天然物・医薬合成に活用された.その後も複数のグループが,天然物全合成,医薬,医薬中間体の合成に利用している. この背景に基づき,合成したβ-ケトエステルの有用性を示すべく,“Stereocomplementary and Parallel Syntheses of Multi-substituted (E)-, (Z)-Stereodefined α,β-Unsaturated Esters: Application to Drug Syntheses,” という内容でAccount(invited)(Front Cover Article, 20 ページ)を The Chemical Record誌に掲載した. α,β-不飽和エステルさらにはチオエステルのTi(or Zr)-Claisen縮合を開拓する.得られた化合物は新規で3つの異なる多官能基を有しており,多様な有機合成への展開が期待できる.さらに別途開発中の立体補完的三・四置換 (E)-,(Z)-α,β-不飽和エステル合成および医薬品合成への応用研究とリンクしてシナジー効果を発揮することが出来た.
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