研究課題
本研究ではスルホンを出発原料に用いてペンタレンなど興味深いパイ拡張化合物を合成し、これを光学材料へ応用展開することを目指した。まずパイ拡張ジベンゾペンタレンを合成し単層カーボンナノチューブへの内包化を試みたが、複合体は確認されなかった。そこで長軸方向の分子長がより短いアントラセンをジベンゾペンタレンに替えたパイ拡張アセチレン誘導体の内包化を試みたところ、複合体の生成が見られた。複合化にはフェロセンの置換が有効であり、複合化によって色素の光吸収波長が長波長シフトすることが分かった。様々な分光学的な調査から、パイ拡張色素はナノチューブの外側に吸着していると結論付けた。この調査の過程でアントラセンに直接置換したアセチレンがラマン分光法に極めて敏感なことが分かった。専門家との共同研究を通じて光電変換効率の最適化を行っている。パイ拡張色素の合成過程で、ホスフィニル置換イナミンを用いたアミノ置換フェナントレンの位置選択的合成法を確立した。パラジウム触媒および銅触媒の存在下、ホスフィニルイナミンと2-ブロモビフェニルに水酸化カリウムを加え薗頭-萩原カップリングを行った後に、求電子剤の添加から分子内Friedel-Crafts反応を経てアミノ置換フェナントレンを合成した。興味深いことにパラジウム触媒存在下、ホスフィニルイナミンと2-ヨードビフェニルに炭酸水素カリウムを加えて直截環化を行った後にメトキシカリウムを用いて脱ホスホリル化を行った場合には、アミノ基の置換位置が異なるフェナントレンレジオ異性体が得られた。さらにパイ拡張アセチレン色素の研究研究で、ピレン誘導体を触媒に用いたエテニルスルホンの光還元反応に成功した。本反応では低エネルギー可視光である緑色光を用いて光Julia反応からオレフィンが得られる。また、本触媒は適度な極性を持つことから生成物との分離も容易であった。
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