研究実績の概要 |
本年度はアキラルな配位子を用いた四面体型キラル亜鉛錯体の構築と機能化について検討を行った。 はじめにアキラルな三座配位子を有する四面体型錯体への不斉補助基を用いた不斉誘導について検討した。1,3-ジケチミナト配位子を基盤とする三座配位子と、二価の亜鉛イオンとの錯体形成により四面体型錯体を構築したのち、種々のキラルアミンを不斉補助基として検討した。このうち、キラルな1,2-アミノアルコールが亜鉛中心に配位することで効果的な不斉補助基なることを見出し、最大でおよそ50:1と、高いジアステレオ選択性で亜鉛中心にキラリティを有する錯体の構築に成功した。さらに不斉補助基であるアミノアルコールはアルデヒドと反応させることで、亜鉛中心より容易に取り外すことができ、亜鉛上にのみ不斉中心を有する"Chiral-at-Zinc"錯体の構築を達成した。 得られたキラル亜鉛錯体の不斉Lewis酸触媒への展開を図った。触媒量のキラル亜鉛錯体をDanishfsky-KitaharaジエンとアルデヒドとのヘテロDiels-Alder反応へ適用したところ、80%を超えるエナンチオ過剰率で環化体を得ることに成功した。溶媒や温度といった反応条件の最適化により、さらなる不斉収率の向上を目指す。 続いて二種類の二座配位子と亜鉛イオンから構成されるプロキラル錯体の構築について検討した。 はじめに対称または非対称な1,3-ジケチミナト配位子、および1,3-アセチルイミナト配位子を合成した、次に異なる二座配位子を段階的に二価の亜鉛イオンと錯体形成することで、プロキラル錯体の構築を検討した。1,3-ジケチミナトと1,3-アセチルイミナト配位子を有する錯体の構築を達成し、現在、二種類の1,3-ジケチミナト配位子を用いた錯体形成について検討を行っている。
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