研究課題/領域番号 |
18K05138
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宇部 仁士 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00512138)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Chiral-at-metal 錯体 / コバルト錯体 / ニッケル錯体 / 自然分晶 / 光学分割 / 四面体型錯体 / 金属中心キラリティ |
研究実績の概要 |
本年度は非対称なアキラル三座配位子を有する四面体方Chiral-at-Cobalt(II)錯体およびキラル@ニッケル錯体の不斉誘導、および光学分割について検討を行った。 光学的に純粋なキラルジアミンをコバルト錯体に配位させ五配位錯体を形成したのち結晶化をこなったところ、金属中心のキラリティに基づく二つのジアステレオマーの共結晶が得られた。ジアステレオマー選択的な結晶化を達成すべく、キラルジアミンの更なる検討を行っている。ジアステレオマーを分離したのち、アキラルな単座配位子へと配位子交換を行い、光学的に純粋なキラル@コバルト錯体の合成を達成する。 四面体型Chiral-at-Nickel(II)錯体について、自然分晶が起こることを見出した。条件を詳細検討することで、再現性よく自然分晶を起こすことが可能となった。これにより光学的に純粋なキラル@ニッケル錯体の結晶を得ることに成功した。現在、自然分晶した結晶のキラリティの判別法、および結晶の成長方法について検討を行っている。 また、新たな金属種として四面体型キラル@アルミ錯体の合成を検討した。トリメチルアルミを用いた非対称なアキラル三座配位子との錯体形成を行ったところ、配位子の配位座のうち二座がアルミに配位子した錯体の形成が確認された。配位子の残る配位座は脱プロトン化されていなかったため、強塩基を用いて脱プロトン化を行い、Chiral-at-Aluminum(III)錯体のラセミ混合物を合成したのち、キラル配位子による光学分割、および自然分晶により光学的に純粋なChiral-at-Metal錯体の構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然分晶により光学的に純粋なChiral-at-Nickel(II)錯体の結晶を得ることに成功した。本研究においてキラル金属錯体を光学活性体として得ることは、円二色性分光測定やCPL(円偏光発光)、錯体の諸性質の解明および不斉触媒へと展開するにあたり鍵となる操作である。結晶化条件の検討やキラル結晶の選別方法を確立することで、測定等の実験に十分な量の錯体を合成し、金属中心不斉を有する四面体型金属錯体の有用性を示していく。 Chiral-at-Cobalt(II)錯体では、キラル配位子を用いたジアステレオマーの構築に成功した。現在のところ不斉誘導や光学分割には至っていないが、キラル配位子の適切な選択によりこれらを達成できると考えている。 さらに、他の金属種についても非対称三座配位子との錯体形成が可能であることが示唆された。金属中心キラリティの発現に向けて、更なる検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
光学的に純粋なChiral-at-Metal錯体の合成:Chiral-at-Nickel(II)錯体では、自然分晶の条件を検討することで、測定に供することができる量のキラル錯体の獲得を目指す。Chiral-at-Cobalt(II)錯体についてはより嵩高い、もしくは低対称性のキラルジアミン配位子を用いた光学分割および不斉誘導を検討する。 Chiral-at-Metal錯体の性質解明: ラセミ体 (紫外可視吸収、EPR、酸化還元電位測定など)や光学的に純粋な錯体(円二色性分光、円偏光発光など)を測定し、コバルト、およびニッケル錯体の諸性質を明らかとする。 不斉触媒への応用: Lewis酸触媒反応や酸化還元反応に対する触媒能を検討し、不斉触媒反応へと展開する。 他の金属への展開: アルミニウムの他、カドミウムやインジウムといった他の金属種への展開を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により研究活動が制限されたため。
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