本研究は、混晶化を利用して新規発光性を持つ銅及び銀発光性錯体の合成と新規発光サイトの創出を目的としている。 銅錯体について、昨年度にビス(4-ピリジル)エタン(bpa)を架橋配位子とする臭化物配位高分子をホスト構造とし、ピペラジン(pip) 、ピペリジン(pipe)を導入することにより強発光性の化合物が得られることを明らかにした。末端配位子であるpipeの導入によって欠陥サイト由来の発光であるという珍しい可能性が示されたため、本年度は、ヨウ化物錯体でも同様の発光ユニットが得られるか検討した。ヨウ化物bpa錯体合成時にpipeを共存させることにより、同様にもとのbpa錯体とは異なる発光が見られ、臭化物錯体同様ヨウ化物錯体でも欠陥サイトが新規発光性サイトとして機能する可能性が示せた。pipeの検出条件についての検討も行い、ヨウ化物錯体でも吸光光度法によりpipeの検出が可能であることも明らかにできた。 銀錯体については、昨年度配位子を大過剰に用いることにより、これまで合成できなかったピラジン、アミノピラジン、メチルピラジン、およびジメチルピラジンを配位子とする臭化物発光性錯体が合成できることを示した。本年度はこれらの新規ユニットの発光励起状態の性質を解明するため、室温から80 Kの範囲で発光スペクトル発光寿命等の測定を行った。また、ヨウ化物錯体でもこれらを配位子とする化合物の合成を試みた。さらに、対応する銅錯体も新規に合成して比較を行った。その結果、銀錯体は銅錯体と類似の電荷遷移状態から発光するが、銅発光ユニットに比べ電荷遷移状態のエネルギーが5000 波数程高エネルギーになることを明らかにした。このため、銀発光ユニットをアミノピラジンのように低エネルギーの配位子内遷移を持つ配位子と組み合わせると、配位子由来の発光が見られることを明らかにした。
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