今年度は、酸化反応を抑制するために嫌気下での合成を検討した。アルゴン下で、[Mo2(O2CCF3)4]と[Pt2(piam)2(NH3)4](PF6)2を脱水溶媒中1:2で混合したところ、混合直後はいずれも黄色を呈していたが、次第に溶液の色が変わり、MeOHで褐色、EtOHで赤色、Me2COで黒色、THFで赤色となり、MeCNでは黄色のままだった。さらに、トルエンもしくはヘキサンを貧溶媒として加えたが、良質の単結晶を得るに至っていない。赤色は、白金複核錯体が会合し四核化し、その2電子酸化体に特徴的な色であり、両者が異種金属結合を形成していることが示唆された。続いて、モリブデンポリオキソメタレートと白金四核錯体からなる集積体の合成を検討した。H3[PMo12O40]、[Pt2(piam)2(NH3)4]2(PF6)4とNaCF3SO3を、MeOH中1:2:80で混合し、Et2Oを蒸気拡散したところ、まず緑色単結晶が析出し、時間とともに、赤色金属光沢をもつ濃青色単結晶が析出した。単結晶X線構造解析の結果、緑色単結晶では、[PMo12O40]と白金四核錯体が静電的に会合し繰り返し並んだ一次元構造を形成していた。組成と金属間距離の比較から白金はPt(+2.25)、モリブデンはMo(+6)の金属酸化状態をもち、不対電子が白金四核錯体上を非局在化していると考えられる。一方、濃青色単結晶は、[PMo12O40]が節となり、白金四核錯体が架橋した二次元シート構造を形成しており、昨年度見出したものと同様の骨格を形成していた。組成を考慮すると、モリブデンと白金の酸化数は非整数で混合原子価状態をとると考えられる。
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