研究課題/領域番号 |
18K05145
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀 彰宏 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50595064)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水素 / 液化技術 / 核スピン転換 / 触媒 |
研究実績の概要 |
高効率液体水素貯蔵を実現するために必要なナノポーラス金属錯体の合成を行った。安定な液体水素の生成には、水素分子の核スピンの転換が不可欠であるが、本年度はこの転換効率を加速するためナノポーラス金属錯体の骨格構成要素の金属イオンを配位不飽和な金属に置き換えたナノポーラス金属錯体の合成に成功した。実際の水素の核スピンの転換時間および転換温度を定量的に議論するために、ナノポーラス金属錯体に水素を導入した状態で核スピンの状態を測定することが可能なin situラマン測定装置を開発した。ラマンの励起レーザー光を試料に照射し、水素ガス雰囲気下で実験が行えるように、光学窓付きのクライオスタットを独自に開発した。この方法により、合成したナノポーラス金属錯体の水素雰囲気したでの核スピン状態が明らかとなった。測定では配位不飽和金属を持つナノポーラス金属錯体と同様の構造の配位不飽和金属を持たないナノポーラス金属錯体を用いて対照実験を行った。配位不飽和金属を有するナノポーラス金属錯体では、水素の液化温度である20Kよりもかなり高温の液体窒素(77K)においても十分なスピン転換を誘起することが確認された。従来の水素核スピン転換材は、液体水素温度の20Kで転換を行っていたに対し、本物質では、水素を液化するのではなく気体の状態で高効率かつ高速に核スピン転換を誘起できることが実証された。水素下でのラマン測定によりMOF細孔内への水素拡散速度及び水素核スピン転換速度の定量的な解析が行えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定な液体水素生成には、水素の核スピン転換が不可欠である。もしも気体水素の状態で高速かつ高効率な水素の核スピン転換が実現できれば、液体水素の運搬のみならず水素社会実現に向けてその波及効果は計り知れない。今年度は、水素が気体である77Kにおいて、核スピン転換が十部進行するナノポーラス金属錯体の合成に成功し、水素転換速度測定が行えるラマン測定装置の開発を行った。このように研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究においてナノポーラス金属錯体に配位不飽和金属を導入することにより水素の核スピン転換が気体の状態でも進行することが確認された。今後は、配位不飽和金属の種類の変更を行いさらなる高効率化を図る。さらに配位不飽和金属が水素の核スピン転換に与える影響について速度論的な解析を行うため、今年度開発したラマン測定装置を用い転換速度の定量的な議論を行う。また放射光X線回折測定を行い、ラマン測定の結果と統合し、高速水素核スピン転換を実現するMOFの設計を行う。
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