本研究は、物質が結晶化する際に常に片方の掌性を持つ光学活性結晶のみが析出する、絶対自然分晶と称する現象の発現機構を解明することを目的とした。光学活性を持たない三脚状配位子と遷移金属及びランタノイド金属塩から生成する陽イオン性三核錯体を含む塩の溶媒和結晶を研究対象とし、様々な金属イオンの組合せや対イオンおよび結晶化溶媒の種類、異なる結晶化条件下での結晶化挙動の相違を検証した。その結果、遷移金属のd電子数及びランタノイドイオンのf電子数がこの特異な結晶化挙動の発現に寄与していることを確認できた。さらに、この化合物の結晶表面では通常のホモキラル認識が起こっており、結晶キラリティの誘導が可能であった。
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