現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀アルキンクラスターのアルキン交換反応は、アリールアルキンの芳香環上の置換基をH, Me, tBu, NO2, OMeと立体的にも電子的にも異なるものを用いて行った。交換の速度は、ガスクロ、NMR,質量分析により行った。[Ag18(CC-C5H4-R)14X(Ph2PCH2PPh2)3]3+は、系中に加えられたHCC-C5H4-Rと交換反応を起こす。質量分析により、交換により生じたクラスターの分子量分布を調べた結果、交換されるアルキンの個数は、アリール基上の置換基の立体的大きさに大きく依存していることが、分かった。また、交換速度は、置換基の電子供与能が高い方が交換が速い傾向があることが分かった。チオールが保護したクラスターの交換反応は、多くの研究例があるが、反応性に富んだアルキン類の交換反応については、初めての定量的データとなった。 新奇な銀クラスターの合成では、クラスターのコアが三角面で囲まれた多面体を軽視しやすいことに注目し、平面三角形型の同錯体を保護錯体配位子として用いることで、効果的に銀のコア構造を保護することに取り組んだ。その結果、[Cu(CCR)3]2-のアルキン間に3つのAg(PPh3)を挟み込んだ[Cu(CCR)3(AgPPh3)3]+ユニットが、安定な平面構造ユニットとして機能することがわかり、4つのユニットをハロゲンイオンが互いに結ぶことで、正四面体型の空孔をもつかご型構造を作ることが分かった。この空孔にはAg13H8クラスターが取り込まれていることが分かった。銀クラスターでこのようなポリヒドリドクラスターが見つかった初めての例である。
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