ヒドラジンは医薬品原料に用いられる窒素化合物で,工業的には窒素から合成したアンモニアを酸化することで製造されている.アンモニアが安定な化合物であるため,窒素からヒドラジンを直接合成するのは困難で,合成にはまわり道を強いられている.最近,金属錯体触媒による直接合成の成功例が報告された. 本研究では,効率よく高選択的にヒドラジンを合成するための触媒設計指針を得るべく,反応機構を詳細に理論解析した.得られた理論的知見を元に,新たな金属錯体が合成され,大幅な触媒活性と選択性の向上を達成できた.今後も,実験と理論計算を組み合わせることで,触媒開発のさらなる効率化を期待できる.
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