研究課題/領域番号 |
18K05150
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 幸正 九州大学, 理学研究院, 助教 (50631769)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金属錯体 / 人工光合成 / プロトン共役電子移動 / 電気化学 / 水素生成反応 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、金属錯体への特異的なプロトン共役電子移動(PCET)により促進される多電子還元系の開発を目的とし研究を行っている。本年度は、特にPCETにより促進される水素生成反応の反応制御に取り組んだ。具体的には、研究代表者らが以前見出したジチオラトニッケル水素生成分子触媒のさらなる低過電圧化を目指し、種々の誘導体の合成を行った。その結果、トリアザナフタレン骨格を有するジチオラトニッケル錯体触媒がpH = 9の水溶液において170 mVという極めて低い過電圧で水素生成を促進することを見出した。本錯体について電気化学的手法を用いてPourbaix図を作成したところ、8.2 < pH < 12.4の領域で、PCETが進行することが判明した。次に配位子のみのCVを行ったところ、その還元電位は錯体触媒の触媒電流のピーク電位と同等の値を示した。これらの結果により、本研究で観測された水素生成反応は、配位子中心のPCET過程(Ligand-centered PCET)をトリガーとして進行することを明らかにした。また、他の錯体触媒誘導体と比較したところ、低過電圧駆動の錯体触媒がより正側の電位領域で配位子中心の還元過程を示すことから、今回新規に評価したニッケル錯体触媒の低過電圧化はLigand-centered PCETの促進により達成されたと結論付けた。最後に、その後続過程について検討を行ったところ、水素生成に至るまでに複数回のLigand-centered PCETを経たのちに水素生成に鍵中間体となるヒドリド種を形成することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り金属錯体触媒に特異的に進行するプロトン共役電子移動(PCET)の反応制御を行った。その結果、研究代表者が以前開発したジチオラトニッケル錯体触媒(Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 4247)のさらなる低過電圧化に成功する(Chem. Commun. 2018, 12820)など本研究課題の進捗はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初の計画通り金属錯体触媒上で進行する特異的なPCET過程に関する先端電気化学解析を実施する。その解析結果をフィードバックさせ、さらなる高活性分子性触媒の創製に取り組む。
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