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2020 年度 実施状況報告書

金属錯体への特異的なプロトン共役電子移動により促進される多電子還元反応系の構築

研究課題

研究課題/領域番号 18K05150
研究機関九州大学

研究代表者

山内 幸正  九州大学, 理学研究院, 助教 (50631769)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードプロトン共役電子移動 / 二酸化炭素還元 / 水素生成 / 分子性触媒 / 人工光合成
研究実績の概要

本年度は、プロトン共役電子移動(PCET)を経て二酸化炭素(CO2)還元反応を駆動する分子性触媒の創出に成功した。具体的には、大環状コバルト錯体触媒が、250 mVという低過電圧下でCO2還元反応を促進することを見出した。
他方、PCETを経て光化学的な水素生成反応を促進することが知られるコバルトNHC錯体触媒について、電子伝達剤の酸化還元電位を制御することによって、光水素生成速度や触媒回転数の向上に成功した。これまで犠牲還元剤EDTA、光増感剤[Ru(bpy)3]2+、電子伝達剤MV2+を含む光反応系において水素生成機能が評価されてきたが、酸化還元電位を制御した電子伝達剤を用いることにより、光反応系における水素生成を効率化させることに成功した。
MV2+を含む6種の電子伝達剤を用い新規光水素生成反応系を構築した。その結果、4種の電子伝達剤を用いた系で光水素生成初速度や触媒回転数の向上が見られた。中でも、最も良い活性を示した反応系において、その水素生成初速度は70倍になった。一方で、最も反応駆動力の大きな電子伝達剤を用いた系では水素生成量・速度の低下がみられた。これは、種々の時間分解分光測定の結果から、[Ru(bpy)3]2+の励起種([Ru*(bpy)3]2+)の消光確率が低いためであることが示された。さらに、ほぼ同じ酸化還元特性を示すにもかかわらず、光水素生成量に大きな差が見られる2つの反応系が見出された。そこで、電子伝達剤の一電子還元種の安定性を光照射下におけるUV-Visスペクトル変化を追跡することで評価を行ったところ、より活性の低い電子伝達剤の還元種は安定性に劣ることが判明し、これがより低い水素生成量を示す要因であると結論付けた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では、プロトン共役電子移動(PCET)を経て各種の多電子還元反応を駆動する新規反応系の構築を目的としている。
今回、PCETを経て二酸化炭素還元反応を駆動する新規分子性触媒の創出に成功した。
また、電子伝達剤の酸化還元特性を変化させることでPCETの反応駆動力を制御し、その反応制御因子を解明することに成功した。
このように、計画に従いおおむね順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

今後は、単一分子で光増感作用を示しPCETを基盤とする触媒反応を駆動する分子性光触媒の開発を進める。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、当初の予定に反し研究協力者の協力が困難となった。具体的には、光増感作用と触媒作用を併せ持つ光分子性触媒の開発に関する研究を次年度にも実施し、繰り越した研究費を研究遂行に必要な物品費として充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ウンム・アル=クラー大学(サウジアラビア)

    • 国名
      サウジアラビア
    • 外国機関名
      ウンム・アル=クラー大学
  • [雑誌論文] Improving the overall performance of photochemical H2 evolution catalyzed by the Co-NHC complex via the redox tuning of electron relays2021

    • 著者名/発表者名
      Yatsuzuka Koichi、Yamauchi Kosei、Kawano Ken、Ozawa Hironobu、Sakai Ken
    • 雑誌名

      Sustainable Energy & Fuels

      巻: 5 ページ: 740~749

    • DOI

      10.1039/D0SE01597K

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Unexpected structure of enaminone Pd(II) complex in comparison with Cu(II) complex: Synthesis, characterization, DNA binding and antitumor activity2021

    • 著者名/発表者名
      El-Ghamry Hoda A.、Yamauchi Kosei、Sakai Ken、Farghaly Thoraya A.
    • 雑誌名

      Inorganica Chimica Acta

      巻: 516 ページ: 120117~120117

    • DOI

      10.1016/j.ica.2020.120117

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 錯体化学で理解する人工光合成反応過程2020

    • 著者名/発表者名
      山内幸正
    • 学会等名
      錯体化学若手の会第1回ウェブ勉強会
    • 招待講演
  • [学会発表] Electrochemical CO2 Reduction to CO with Low Overpotentials by Co-NHC Complexes2020

    • 著者名/発表者名
      Kosei Yamauchi, Toshihiro Koga, Yasunobu Wakafuji, Ken Sakai
    • 学会等名
      錯体化学会第70回討論会
  • [備考] 九州大学 錯体化学研究室

    • URL

      http://www.scc.kyushu-u.ac.jp/Sakutai/jp/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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