近年、σ電子受容性 (Z 型) 配位子を鍵要素とする触媒開発が盛んになりつつある。例えば、Z 型配位子が作り出す中心金属の電子状態に着目して、鉄錯体を用いた初めての窒素固定反応が実現された。また、アルキンのヒドロアミノ化を始めとする触媒反応に高い活性を示す求電子的な金触媒が創製されている。我々のグループにおいても、σ電子受容性(Z 型)配位子の機能開拓とそれらを活かした触媒反応の開発に関する研究を展開してきた。例えば、σ電子受容性(Z 型)配位子が多様な酸化状態の錯体を安定化し、多電子移動の機能を有することを見出してきた。また、σ電子受容性(Z 型)配位子として作用する反応基質が求核的に活性化されていることに注目して、強固なケイ素-フッ素結合やホウ素-フッ素結合の切断反応を化学量論反応で開発してきた。 本研究では、これまでの研究成果を基に、σ電子受容性 (Z 型) 配位子の更なる機能探索とその特徴を活かした触媒反応の開発へと研究を展開した。触媒反応としては、二酸化炭素をメタノールへと高効率に変換する技術が特に求められていることを考慮して、まず二酸化炭素の変換反応の開発に取り組んだ。加えて、新しいタイプの金属-配位子協同効果の発現と、それを鍵要素とする触媒反応の開発に取り組んだ。具体的には、Z 型ボラン配位子を求核剤の受容体とすることで、既存と異なる反応機構を基盤とするカップリング反応を実現した。さらには、Z 型配位子として作用する反応基質の電子状態に注目して、σ逆供与を軸とする求核的な活性化法を鍵要素とする、高周期14族元素化合物を用いたカップリング反応を開発した。
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