研究実績の概要 |
分子包接現象や吸着分離材料において、分子を見分ける方法の多くがサイズ及び極性の違いを利用している。そのため、アセチレンなどの炭化水素と二酸化炭素のように、サイズが近く、極性が似ている(無極性を含む)化合物の分離は困難であり、工業的な分離法の確立が要請されている。そこで、本研究では、フッ素置換に基づく四重極モーメントの認識効果に着目し、サイズ及び極性が似た物質を静電的相互作用に基づいて分離する新材料の開発が必要であると考えた。本研究では、金属錯体の配位子部分に芳香族フッ素(C6F5基やC6F4部位)を導入することで、一般的な金属錯体と正反対の四重極モーメントを誘起したホスト分子の設計とその分子性結晶を用いた分子認識機能を調べることを検討した。 本研究の初年度は、① フッ素置換二核錯体の設計・合成・構造解析、② フッ素置換数を変更した金属錯体の設計・合成・構造解析、③ フッ素置換配位子を用いたMOFの設計・合成・構造解析から研究を開始した。特に、①の実験からフッ素置換二核鉄、コバルト、ニッケル、銅錯体について、金属イオンによって吸着能が異なる現象を見出した。また、これらの合成研究に関連して、以下の論文執筆に加え、2件の招待講演、6件の学会発表を行なった。 1) T. Kusakawa, S. Sakai, K. Nakajima, H. Yuge, I. I. Rzeznicka, A. Hori,* Crystals, 2019, 9, 175, 1-12. 2) A. Hori,* E. Betsugi, Y. Ikumura, K. Yoza, Acta Cryst., 2019, C75, 265-270.
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