研究課題
本研究では、高度に分極した「典型元素不飽和化合物」を合成し、小分子の活性化などの反応性の開拓を通して、典型元素化合物に関する先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする。独自に開発した「縮環型立体保護基(Rind基)」を駆使して、ホウ素やアルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛などを含む新しい不飽和化合物を合成する。それらの分子構造や化学結合について解明するとともに、高度に分極した電子構造に由来する特異な反応性を探究し、元素科学における根源的な問い『典型元素は、遷移元素を凌駕するような反応性を示すであろうか?』にアプローチすることを目的とする。平成30年度は、種々のかさ高さのRind基(EMind基、Eind基、MPind基)を有する「ハロスタンニレン」を系統的に開発し、Rind基のかさ高さに応じて結晶中における会合状態が変化することを明らかにした。Eind基を有するハロスタンニレンの還元反応により「テトラスタンナシクロブタジエン」の初合成に成功し、分子構造を単結晶X線構造解析により決定した。スズ四員環が電荷分離した平面ひし形構造を形成することを明らかにした。また、EMind基を有する「テトラゲルマシクロブタジエン」の反応性について調査を行った。ジクロロゲルミレン・ジオキサン錯体との反応では、塩素原子が置換した従来にない「ペンタゲルマ[1.1.1]プロペラン」が生成することを明らかにした。プロペランの分子構造を単結晶X線構造解析により決定した。また、平成30年度は、Rind基を有する14族元素二価化学種「テトリレン」と種々の酸素源との反応性について調査し、高度に分極した14族元素ー酸素結合を有する「テトラノン」の合成条件を検討した。
2: おおむね順調に進展している
新奇な14族元素不飽和化合物である「テトラスタンナシクロブタジエン」の合成・単離に初めて成功するとともに、「テトラゲルマシクロブタジエン」から「ペンタゲルマ[1.1.1]プロペラン」に合成変換するなど反応性の開拓を行ったことから、「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。「テトリレン」から「テトラノン」への高効率な変換には、反応に用いる酸化剤の選択や単離操作の工夫などの課題が残されている。
「テトラゲルマシクロブタジエン」や「テトラスタンナシクロブタジエン」の反応性の開拓を進めるとともに、熱的に安定な「テトラシラシクロブタジエン」を開発することで、ケイ素、ゲルマニウム、スズの四員環不飽和結合の化学を系統的に発展させる方針である。新たに鉛の四員環化合物の合成にも挑戦する。
研究が当初計画どおりに進んだところと進まないところがあり、次年度使用額が生じました。次年度はさらに合成研究を加速させる予定であり、物品費、旅費、その他に使用する計画です。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 8件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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