本申請では,以下の4つのテーマについて検討を行う計画であった.すなわち,I)LLWのキャラクタリゼーション手法の高精度化とその評価(H30),II)LLWの錯形成反応観察への応用(H30~R1),III)LLWにおける反応物の拡散係数の効果の検討(H30~R2),IV) LLWの酸化還元反応観察への応用(H30~R2),である.本年度は,上記4つの項目のうち、主にII)について検討を行った。なお、IV)は、コロナ禍などによる計画の遅れにより、本申請内での検討を断念した。 本年度の研究内容は以下の通りである。 1)II)の錯形成反応観察に関しては、50%エタノール/水により液液光導波路を形成させ、コアにAl3+、クラッドにAl3+の蛍光誘導体化物質で配座数の異なるキレート剤であるルモガリオンまたは5-スルホ-8-キノリノール(HQS)を添加し、錯体生成反応の測定を行った。 2)Al3+溶液のpHを変化させることでAl3+-水酸化物錯体、また、錯形成剤を添加することによりAl3+-クエン酸錯体、Al3+-シュウ酸錯体、Al3+-フッ化物錯体を生成させ、液液光導波路を用いて、ルモガリオンとHQSにより、どのAl化学種が検出できるか基礎研究を行った。その結果、平衡計算から得られたフリーのAl3+の存在率と実験値から得られたAl3+-ルモガリオン錯体の存在率が一致したことから、Al3+-クエン酸錯体、Al3+-シュウ酸錯体、Al3+-フッ化物錯体は検出されず、フリーのAl3+のみを検出できることがわかった。一方、ルモガリオン、HQSで比較すると、ルモガリオンはフリーのAl3+のみを検出できるのに対し、HQSはAl3+-シュウ酸錯体の一部、Al3+-一フッ化物錯体をフリーのAl3+と同時に検出できることがわかった。
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