研究課題/領域番号 |
18K05165
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
勝田 正一 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (40277273)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | イオン液体 / 溶媒抽出 / 分離濃縮 / レアメタル / 第四級アンモニウム系薬物 / ヨウ化物イオン |
研究実績の概要 |
本研究課題では,従来抽出が困難とされてきた物質に対して有効な新しいイオン液体(IL)抽出系を探索することを目的とする。令和2年度は,抽出対象として主に (1) 第四級アンモニウム系薬物,(2) ヨウ化物イオン について研究を行い,以下のような成果を得た。 (1) 前年度までに,水中の極微量のピリドスチグミンおよびネオスチグミンを分析するための前分離・前濃縮法として,ILマイクロ抽出法の検討を行った。当年度は,更に抽出能・濃縮能に優れるILを探索した。その結果,ある種のプロトン性ILを用いることにより,これらの薬物を1000倍以上の高倍率で濃縮可能であることを見いだした。また,抽出濃縮後のIL相中の薬物を水溶液へ逆抽出する条件についても検討した。最適化されたILマイクロ抽出法-逆抽出法によって得られた薬物濃縮水溶液を親水性相互作用クロマトグラフィー(検出器:UV,CAD,MS)に供することにより,IL成分の干渉を抑えた高感度な分析が可能であることを示した。 (2) 当年度は,前年度までの研究で優れたヨウ化物イオン抽出能を見いだした2種の塩化物系ILについて,ヨウ化物イオン/塩化物イオン間のイオン交換平衡定数(K)を求めた。また,比較のため,数種の代表的な市販陰イオン交換樹脂についても同条件でK値を求めた。その結果,2種のILのK値は互いにほぼ等しく,また,強塩基性陰イオン交換樹脂よりも約10倍,弱塩基性陰イオン交換樹脂よりも約100倍大きいことが分かり,これらのILがヨウ化物イオンに対する優れた分離剤であることが明示された。 その他,ILを抽出溶媒とするランタノイド-リン酸ビス(2-エチルヘキシル)の抽出についても研究を行い,通常の溶媒よりもILを用いた方がランタノイド元素間の分離能に優れることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当年度は,以下の理由により本研究課題の遂行に充てられるエフォートが減少し,研究の進捗に遅延が生じた。 (1) 新型コロナウイルス感染症の拡大による大学内への入構規制および研究室への入室人数・入室時間の制限 (2) 勤務先における役職の委嘱:理学研究院 副研究院長(兼入試委員長・広報委員長)等 (3) 学会における役職の委嘱:機関誌編集委員長(公益社団法人日本分析化学会),理事・会計監事(日本溶媒抽出学会),第39回溶媒抽出討論会副実行委員長(日本溶媒抽出学会)
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度にやり残した実験を遂行し,研究成果をまとめ,学会発表や論文発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症拡大の影響で,令和2年度当初は緊急事態宣言による大学への入構規制があり,その後も研究室内での密集・密接を避けるため入室人数や実験時間の制限を行った。その結果,実験量が予定よりも減少し,物品費等にかかる経費が減少した。また,人の移動が制限され,学会やセミナーが中止またはオンライン開催となったため,旅費の執行は0円となった。 (使用計画)次年度は,令和2年度に実施できなかった実験の遂行に必要な消耗品購入のために「物品費」を充てる。対面での学会が開催されれば,それに参加するために「旅費」を充てる。また,ICP発光分析装置等の共用機器利用料,学会参加登録料,論文掲載料等の支払いに「その他」の経費を充てる。
|
備考 |
学生優秀発表賞受賞:「プロトン性イオン液体を用いた第四級アンモニウム薬物の分離・濃縮」○岡卓哉,濵本拓也,勝田正一,第39回溶媒抽出討論会(2020年11月)
|