研究課題/領域番号 |
18K05167
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
會澤 宣一 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (60231099)
|
研究分担者 |
小玉 修嗣 東海大学, 理学部, 教授 (70360807)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ポルフィリン錯体 / NMRキラルシフト試薬 / 化学シフト拡張試薬 |
研究実績の概要 |
本研究では、永久磁石を備えた低磁場NMRにおいてもキラルシグナルの分離が容易に行えることを目的として、ポルフィリン錯体等の共鳴環状化合物をキラルシフト試薬と併用し、NMR化学シフトの拡張や、シグナルの重なりを回避しようとするものである。 不斉アミンラセミ体(例えばDL-フェニルエチルアミン)の1H NMRシグナルをランタノイドキラルシフト試薬[Yb(tfc)3](tfc = 3-(trifluoromethylhydroxymethylene)-(+)-camphorate))を用いてキラル分離を試みたが、分離はできなかった。しかしながらキラルシフト試薬と等量のCo(III)ポルフィリン錯体[CoCl(TPP)](TPP = tetraphenylporphine)を添加するとメチンプロトンのシグナル分離が観測された。さらに、ポルフィリン錯体添加前は、重なっていたプロトンシグナルを分離して観測できることも確認した。 以上のように、キラルシフト試薬とポルフィリン錯体の両方に相互作用するような化合物では、ポルフィリン環の環電流効果により、キラル分離が困難であったシグナルのキラル分離を可能にしたり、複雑に重なり合ったシグナルをシフトさせ分離したりすることが可能であることが明らかになった。さらに、リン原子を含むキラル化合物では、キラルシフト試薬だけで、簡便にシグナルのキラル分離ができることも分かったので、この点については今後検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランタノイドキラルシフト試薬にCo(III)ポルフィリン錯体を添加すると、分離できなかったプロトンシグナルや重なって観測できなかったシグナルが分離観測できたため、ほぼ予想通りの結果が初年度に得られたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
実験途中で不斉アミンではなく不斉ホスフィンを用いた場合、1Hや13C NMRだけでなく31P NMRを用いると簡便にラセミ体のシグナル分離が観測されたため、今後不斉ホスフィンについては、31P NMRを利用したシグナルのキラル分離やシグナルシミュレーションを取り入れて実験を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会発表が公務と重なり中止となったため、旅費等の出費が減じた。平成31年度は、新たに光学活性ホスフィンの31P NMRシグナル分離を検討するため、当初計画以上に消耗品費が増加するため、繰り越し分を充てる予定である。
|