研究課題/領域番号 |
18K05168
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
リム リーワ 岐阜大学, 工学部, 教授 (80377689)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロ波合成 / 迅速調製 / 有機ポリマーモノリス / マレイン酸モノリス / キャピラリーLC |
研究実績の概要 |
液体クロマトグラフィーにおいて,これまでの分離カラムは,担体に数ミクロンの微粒子が用いられてきた。粒子充填型カラムにおいて分離性能を向上させるには粒子径をより小さくする,あるいは,カラムを長くするといった方法が挙げられ,多くの研究者が充填剤のサイズを減らすことで短時間かつ高効率を得てきている。しかし,粒子間の隙間が小さくなるとカラムの背圧が高くなるといった問題が生じる。それ以上の限界を超えるより高い性能は,モノリス型カラムを利用する事で達成できる。
モノリス型カラムを調製する際,通常はカラムに前処理を施し,カラムに固定相を固定させるための二重結合を導入する。しかし,前処理には一般的に数時間から数十時間程度かかり,手間や時間がかかる。また,加熱炉を用いる外部加熱方式では作製されるモノリスのポアの均一性に限界がある。近年では合成化学において,マイクロ波を照射することにより,反応時間の大幅な短縮や,副反応が抑制され収率が向上する事が報告されている。しかしながら,マイクロ波加熱のメカニズムは長く議論されており,それは現在まで続いている。
キャピラリーサイズのモノリス型固定相(カラム)はin situ重合法により調製される。有機ポリマーモノリスを調製する際,一般的にアクリルアミド系やメタクリル酸エステル系等のモノマーが使用されるが,本研究では,マレイン酸系のモノマー等を使用することにより,カラム管に前処理を施さず,カラムの調製にポロゲン(細孔形成剤)を使用しない,従来のカラムよりも調製手順が少ない,簡便かつ斬新なカラム調製法を見出した。そこで本研究では,この合成メカニズムを解明することとともに,マイクロ波照射技術の最適化をし,モノリス型キャピラリーカラムの調製の再現性向上を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はオーブンによる熱重合およびマイクロ波加熱(照射)によるマイクロ波合成法を用いて,有機ポリマー系モノリス型キャピラリーカラム(内径0.32 mmに統一)の調製および分離性能の比較検討を行った。
新規マレイン酸モノリスカラムの合成では,モノマーとしてマレイン酸ビス(2-エチルヘキシル) (BEHM),架橋剤としてエチレンジメタクリレート(EDMA),ポロゲンとして1-デカノールのみをバイアル瓶中で混合させ,重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え,85 ℃, 24 時間オーブン内で熱重合させた。調製されたBEHMキャピラリーカラムを用いて,逆相モードによるアルキルベンゼン(toluene,ethylbenzene,propylbenzene,butylbenzene,amylbenzene)の分離保持を調べた。50%のアセトニトリル水溶液を用い,全てのサンプルは20分以内に完全分離でき,理論段数は約1000段だった。
マイクロ波合成法では,①メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA),②ビニルスルホン酸ナトリウム(VSA),③メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム(SPMP)をモノマーとして利用した。ポロゲンは,1-デカノール,ジメチルホルムアミド,イオン交換水から2つ選び,EDMAとAIBNを加え,マイクロ波出力500 Wで30分重合させた。前処理を行わなくともモノリスを未処理のキャピラリーに固定させることが可能であることが分かった。しかし,カチオンおよびアニオンの分離能は熱重合に比較して悪かった。短時間重合では架橋剤であるEDMAがモノリス骨格の主体であるため,凝集が起こりやすくなると考察される。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロ波合成では,極性物質やイオンを選択的に加熱するため,キャピラリー内部から加熱することが可能であるため,モノリス内部と外部の間に加熱時間の差が小さくなり,短時間の重合でもモノリス骨格に与える影響は小さいことがわかった。 今後,短時間重合の加熱条件を検証するため,C12有機モノリスカラムを使用し,以下の3種類の加熱条件を検討する。また,比較対象として同じモノマー溶液を用いて従来の重合方法で重合したC12有機モノリスを作製する。 ①100 ℃の水の中に入れ, マイクロ波を500 W, 30 min加熱 ②100 ℃の水の中に入れ, マイクロ波を500 W, 15 min加熱 ③100 ℃のオーブンで15 min加熱 ④60℃のオーブンで24 h加熱
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行には,当研究室所有のマイクロ波反応装置(Wave Magic MWO-1000S 型;EYELA)を利用するが,調製されたキャピラリーカラムの性能をイオン交換クロマトグラフィー法を用いて行ったところ,従来法と比べイオンの保持時間の上昇及び分離性能の改善に繋がっていることが示されているが,化学修飾反応においてはマイクロ波の効果はみられなかった。 そのため,計画を変更し,マイクロ波の影響を受けやすい重合モノマーや架橋剤等を選定し,様々な固定相を調製することとしたため,未使用額が生じた。
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