研究課題/領域番号 |
18K05168
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
リム リーワ 岐阜大学, 工学部, 教授 (80377689)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロ波合成 / ワンポット反応 / 迅速調製 / 有機ポリマーモノリス / キャピラリー固定相 / キャピラリーLC |
研究実績の概要 |
本研究の遂行には,当研究室所有のマイクロ波反応装置(Wave Magic MWO-1000S 型;EYELA)を利用しているが,一部の反応において,温度制御ができない場合があった。本年度では,加熱条件の安定性や均一性等を確かめるため,恒温槽(water bath)とオーブン(乾燥炉)による熱重合およびマイクロ波照射によるマイクロ波合成法を用いて,有機ポリマー系モノリス型キャピラリーカラム(内径0.32 mm)の調製および分離性能の比較検討を行った。
合成では,単一のモノマーとしてポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA;モノマーと架橋剤両方の役割を持つ)を使用し,ポロゲンには1-プロパノールおよび1-デカノール,重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリルを用い,①恒温槽60℃・24時間,②オーブン60℃・24時間,③マイクロ波100 W・5分の条件で作製した。
モノリスをマイクロ波で重合させたとき,カラムへのMeOH通液が難しくカラムの背圧は3.0 MPaとかなり高くなってしまった。また,無機陰イオンの分離性能を確認したところ,恒温槽やオーブンを用いて作製したカラムを用いての分離結果と比べ全体の保持時間は短くなり,5つのサンプルが分離出来ていないという結果になった。さらに,SEMからはマイクロ波重合後のカラム内に空隙があまり確認できないため, PEGDMAはカラム内でマイクロ波によって硬化されすぎてしまうと考える。また,オーブンを用いて重合した場合は60℃,24時間の条件では恒温槽に比べると重合が劣っていることとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の遂行には,当研究室所有のマイクロ波反応装置(Wave Magic MWO-1000S 型;EYELA)を利用しているが,数年前から装置の不調が続き,温度制御ができない場合がしばしばあった。例えば,120℃・油浴での無機系(シリカ and/or チタニア)モノリスを調製する際,出力200 Wでマイクロ波加熱設定では反応温度が80℃で停止してしまう。一度修理に出したが,その後同様に100℃を超える温度制御での加熱ができないことになっている(装置は250℃まで加熱可能)。
また,キャピラリーサイズのモノリス型カラムでのin-situ重合について,有機ポリマーモノリスより分離能が高いとされているシリカ系キャピラリーカラムの調製についても検討したところ,耐塩基性のあるハイブリッドシリカ・チタニアでのバッチ法による重合に成功したもののキャピラリー内でのin-situ重合は不可能であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
装置の使用温度が限られているため,今後,100℃以下で重合しやすいモノリスカラムの最適調製を行う。具体的に,加熱条件の安定性や均一性等を確かめるため,恒温槽とオーブンによる熱重合およびマイクロ波照射によるマイクロ波合成法を用いて,有機ポリマー系モノリス型キャピラリーカラム(内径0.32 mm)のin-situ調製および分離性能の比較検討を行う。
有機ポリマー系モノリスを調製する際,一般的にアクリルアミド系やメタクリル酸エステル系等のモノマーが使用されるが,本研究では,マレイン酸系のモノマー等を使用することにより,カラム管に前処理を施さず,カラムの調製にポロゲン(細孔形成剤)を使用しない,従来のカラムよりも調製手順が少ない,簡便かつ斬新なカラム調製法を見出した。そこで本研究では,この合成メカニズムを解明することとともに,マイクロ波照射技術の最適化をし,モノリス型キャピラリーカラムの調製の再現性向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行には,当研究室所有のマイクロ波反応装置(Wave Magic MWO-1000S 型;EYELA)を利用しているが,数年前から装置の不調が続き,温度制御ができないという問題点が発生している。しかしながら,調製されたキャピラリーカラムの保持・分離性能について,イオン交換クロマトグラフィー法を用いて行ったところ,従来調製法と比較してイオンの保持時間の上昇および分離性能の改善を示しているが,化学修飾反応においてはマイクロ波の効果はみられなかった。
また,キャピラリーサイズのモノリス型カラムでのin-situ重合について,有機ポリマーモノリスより分離能が高いとされているシリカ系キャピラリーカラムの調製についても検討したところ,耐塩基性のあるハイブリッドシリカ・チタニアのキャピラリー内でのin-situ重合は不可能であることがわかった。 そのため,研究計画を変更し,マイクロ波の影響を受けやすい重合モノマーや架橋剤等を選定し,様々な固定相をテスト調製することとしたため,未使用額が生じた。
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