研究課題/領域番号 |
18K05170
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山 宗孝 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90221861)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 貴金属ナノ粒子 / 修飾電極 / ボルタンメトリー / 電気化学分析 |
研究実績の概要 |
本年度は、特に、ニッケル線電極表面にパラジウムを修飾する方法について検討した。具体的には、塩化パラジウム酸イオンを含む水溶液中にニッケル線を浸漬するだけの簡便な方法を用いることで、パラジウムのナノ構造体をニッケル表面に修飾した。その後、修飾したパラジウム量については、修飾電極を用いてエタノールの電極触媒酸化時の酸化電流を測定することにより評価した。その結果、当初は室温で検討を行っていたが、修飾の再現性が悪く、特に室温が低くなるとうまく修飾できないことが多くあった。そのため、反応条件について種々検討し、ニッケル線を1 M 塩酸で前処理することと、恒温槽を用いて50度で反応を進行させることが再現性のよい応答を得るために有効であることを明らかにした。また、パラジウムイオンが2価と4価の場合の修飾反応の違いも明らかにした。 さらに、この検討に基づいて、金属線については鉄・銅などを含め種々検討したが、パラジウムの析出にはニッケル線とコバルト線が特に適していることがわかった。貴金属については、表面での固体析出を伴う現象であるために、調製した電極ごとで個体差が大きいことが問題点として明らかになったが、貴金属修飾の再現性については、金・パラジウム・白金の順に悪くなり、白金の場合は定常的な修飾が難しい結果が得られた。 それを改善するための方策として、貴金属2成分系へニッケル線を浸漬する方法について検討を開始したが、その結果、金・パラジウムおよび金・白金の各イオンを混合した水溶液中にニッケル線を浸漬すると、貴金属の析出反応が促進されることを見出した。そのため、現在はこれらの貴金属混合2成分系への検討を行っている。 このほかにも、ニッケル線の代わりにニッケルマイクロ粒子を用いた検討や、チタン線表面への金ナノ粒子修飾についても検討を進め、一定の成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ニッケル線電極へのパラジウム修飾については、一定の知見を得て論文にまとめることができた。また、それに基づいて、ニッケルマイクロ粒子に同じ原理でパラジウムを修飾して、それをエタノール酸化のための電極触媒として応用するところまで研究を進展させた。さらに、卑金属線や貴金属の種類による電極修飾の違いついても検討を進めることができた。 上記の成果から、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。それに加えて、貴金属2成分系での試みで予期していない興味深い結果が得られたので、それらの進展についても次年度以降大きく期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究については、卑金属線表面に単一貴金属を修飾することを想定して当初計画を立案したが、初年度にニッケル線表面へのパラジウム修飾を基盤として大きく進展できた。そのため、今後の研究の推進方策としては、下記の2点を中心課題として検討を進める。 1.ニッケルマイクロ粒子に関する貴金属修飾に関する検討をすすめ、通常の炭素などが担体として用いられる貴金属電極触媒の分野で、ニッケルマイクロ粒子が担体としてどのように活用できるかを明らかにする。 2.貴金属2成分系のニッケル線電極表面修飾についてさらに検討を進め、析出反応の促進機構や、2成分で発現する特異的な電極触媒特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
安価な卑金属線の利用と、貴金属イオンの少量化について検討したため、物品費については大きく抑えることができた。その一方、国際共同研究によって応用の可能性を探索するため旅費の支出が多くなった。トータルで、次年度へ8万円程度繰り越すが、次年度は成果報告のために旅費が多くなることを予測しており、合わせて有効に活用して成果があがるように使用していく計画である。
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