昨年度までの検討の結果、卑金属線としてはニッケル線が有効であることが明らかになったが、ニッケル線表面への白金修飾は、塩化白金酸イオン水溶液にニッケル線を浸漬しただけではほとんど進行しない。この問題を解決するために、昨年度の検討において、ニッケル線をまず硝酸銀水溶液に浸漬してニッケル表面に銀を修飾し、その後、塩化白金酸イオン水溶液中で銀修飾ニッケル線を処理するという段階的修飾法を用いることにより、電極表面に白金触媒を修飾できることを見いだした。 本年度は、まず、この検討結果をもとに、ニッケル線表面に銅を修飾したのちに白金を段階的に修飾することで、銀の場合と同様に白金の修飾を促進できないかを検討した。しかし、銅の場合は初段の銅の表面修飾がほとんど進行せず、その後の白金修飾でも顕著な変化は見られなかった。 そのため、別のアプローチとして、銅イオンと塩化白金酸イオンをともに含む水溶液中にニッケル線を浸漬することにより、どのような表面修飾が起こるかを検討した。その結果、単純な一段階の浸漬法による修飾であるにもかかわらず、銅イオンが共存すると白金ナノ粒子がニッケル線表面に修飾できることが、表面のSEM像の観察とエタノールの電極触媒酸化電流計測の結果、明らかになった。また、この修飾法では、白金は修飾されるものの、銅はほとんど析出していないこともわかった。そのため、この一段階での浸漬法は、ニッケル表面に白金を修飾する方法として有効であると考えられる。 現在、この結果をもとにして、銀イオンと塩化白金酸イオンをともに含む水溶液中にニッケル線を浸漬する検討にも着手している。銀イオンと塩化白金酸イオンが共存すると、塩化銀が生成するため溶液は白濁するが、この溶液中でも白金ナノ粒子がニッケル線表面に修飾できることを確認し、さらに検討を進めている。
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