研究課題/領域番号 |
18K05171
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 直哉 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10372567)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ESPR / 表面プラズモン共鳴 / 表面ラフネス / 電気化学析出 |
研究実績の概要 |
前年度に電気化学表面プラズモン共鳴法(ESPR)を用いて見出した、イオン液体|金界面における銅の電気化学析出(電析)過程のin-situ計測における金電極表面の平滑化現象を、反射率シミュレーションを用いて検討した。Abelesによる多層膜からの反射率計算法をBruggemanの有効媒質近似を組み合わせて用い、表面にラフネスを持つプリズム/金薄膜/銅電析膜/イオン液体の多層膜系をモデル化した。銅の析出および再溶解に基づくSPR共鳴角のシフトを表面ラフネスと析出量を変数とした二次元等高線プロットで表した。ESPRで実測されている、サイクリックボルタンメトリー(CV)を繰り返すごとに観察されるSPR共鳴角の変化量の減少を、シミュレーションで再現することができた。また、シミュレーションによるSPR共鳴角の変化量は実測のそれよりも大きく、実測では電極表面近傍における銅イオンCu^+の枯渇が、みかけのSPR共鳴角の変化量を小さくしていることが見出された。 電極表面の平滑化の原因として、金のイオン液体中への溶出が考えられるため、原子吸光測定により測定後のイオン液体中に含まれる金の濃度を定量した。その結果、金の濃度は検出限界以下であり、イオン液体への溶出は起こっていないことがわかった。従って、銅の析出に伴い表面における金原子の表面拡散が促進されていることが考えられる。 このようにESPRを他の方法を援用して用いることにより、電析の初期過程のin-situ計測が可能であることがわかった。他金属へ展開し、ナトリウムやコバルトの析出についても同様にESPR測定を行い、解析を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ESPRとAFMにより示された電析に伴う電極表面ラフネス変化をシミュレーションでも再現でき、より主張を強固にでき、論文投稿の目途が立った。また、他金属種への展開も開始しており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
他の金属種について行っている実験結果を解析し、金属の個性を引き出す。金属イオンへの配位性の異なるアニオンからなるイオン液体で実験する。金属錯イオンの正味の価数を変化させるような添加剤を加えた場合についても検討する。分子動力学シミュレーションを援用し、分子レベルでの描像を得る。
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