本研究では、ゴムの架橋に関与する硫黄原子を測定することができる次世代型NMR法を開発し、分子レベルにおけるゴムの架橋構造の解明に挑戦した。具体的には、主に次世代型固体NMRシステムと無磁場固体硫黄NMR法を用いて、ゴムの架橋構造におけるモデル化合物(スルフィド結合を有する有機硫黄化合物)の固体硫黄NMRスペクトルの観測と解析に、世界で初めて成功した。硫黄33安定同位体標識を施した有機硫黄化合物の合成ルートを確立した。また、スペクトルシミュレーションでは、摂動論を用いず、ゼーマン相互作用と四極子相互作用を考慮したハミルトニアンから数値解析で線形を計算することが可能になり、より正確な解析が可能になった。得られたNMRパラメータを立体構造と比較検討することで、硫黄原子周辺の局所構造解析が可能であることを証明した。つまり、非晶性高分子中における硫黄官能基を対象とした定性・定量分析法を新規に開発することができた。本研究成果を活用することで、ゴム物性の基盤でありながらこれまでブラックボックスであった架橋構造を分子レベルで解明することが可能であることを実証した。
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