研究課題/領域番号 |
18K05180
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 准教授 (20333049)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 細菌検出 / ジピコリルアミン / 電気化学 / ルテニウム錯体 |
研究実績の概要 |
本研究は「新規応答機構による,細菌の選択的検出または短時間捕集が可能な金属錯体型機能性ナノ粒子を開発する」ことを目的に開始された。細菌はμmオーダーの大きさであり,肉眼では見えないが,これを凝集させることにより100-1000倍にできれば,肉眼での定性的検出が可能となる。あるいは機器分析における定量測定のうち,化学反応を直接電気信号に変える最もシンプルな測定手段である電気化学的手法を用い,ナノ粒子表面での増幅機構を応用し高感度検出を行う。 2018年度の研究実績としては,1)フェニルボロン酸/デンドリマー型高分子センサーを用いた細菌検出,2)二点認識型複合体シクロデキストリンプローブによるアデノシン2リン酸の選択的検出,3)ルテニウム錯体修飾金ナノ粒子を用いた細菌の電気化学検出が主なものである。 1)についてはフェニルボロン酸の修飾率やデンドリマーの世代,表面状態(pHなど)を制御することでグラム陽性/陰性菌を選択的に凝集識別できる系を開発し,学会誌に公表した。2)についてはプローブおよびシクロデキストリンのそれぞれに分子認識部位を付けることで,弱い相互作用の多点増幅を用いることで,生理的条件下ADPに特異的に高い結合定数で応答する系を構築することができ,これを国際学会で発表した。3)については,これまで糖認識で培った系を丁寧に検証し,細菌に対する応答機構が存在すること,および金ナノ粒子の固定化について検討を行った。これらの結果は国内外の学会でポスター/口頭発表を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で明らかにしたいことは,①錯体修飾金属ナノ粒子の電気化学検出機構の解明,②蛍光あるいは電気化学による細菌の高感度検出,③選択的細菌凝集能を持つナノ粒子の開発,の3点である。2018年度①については,電子ホッピングに関する知見は多少得られたが,大きな進捗は得られてはいない。②については,電気化学を用いるためのナノ粒子の固定法に加え,電極部分のデザインの検討を進めており,実用化に向けて再現性の高い系を構築することができそうである。③については,概要に示した学会誌の公表のほか,表面状態や就職率,粒子の違い(高分子かナノ粒子か),さらには粒子の固定化/ゲル化についての検討を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況の①~③に対し,①については,電流増幅機構に関してこれまでの実験結果をまとめて論文化する予定である。②については、包接場であるシクロデキストリンに配位子であるジピコリルアミンをシンプルな形で導入することを検討する。③については、本年度は金ナノ粒子に包接場であるシクロデキストリンを直接表面修飾し、そこに分子認識能を持つ化合物と導入することで、新しい系を構築することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に電極を中心とする消耗品について、余裕を残していたが、2018年度は使用予定数より少ない消耗品で実験を進めることができた。また、研究費の大半を紫外-可視分光装置に用いたが、これは本来すでに当研究室で所有している装置を用いて測定する予定であったが、予定外の部品故障により買い替えの必要が生じ、これに経費の主な部分を充てている。残額については、2019年度の研究に用いる試薬代・器具代金に充当する予定である。
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