研究課題/領域番号 |
18K05181
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
小谷 明 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (40318184)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超強酸性物質 / 電気化学 / 分析化学 / 解離定数 / 酸度 |
研究実績の概要 |
本研究課題で測定対象として扱う超強酸性物質・酸性や塩基性が極めて弱い物質・強塩基性物質は,多様な研究分野において計測するニーズがある.しかし,これらの物質は電極不活性な場合が多く,従前の電気化学分析法では,計測することが困難である.そこで本研究では,酸・塩基性物質の電気化学検出法のワイドレンジ化を図り,電気化学的に計測不能な酸・塩基性物質の分析に適用できる方法を開発することを目的とする. 本年度は,超強酸性物質の電気化学検出法を開発し,これまでに研究代表者が開発した酸検出法の適用範囲を拡張することができた.超強酸性物質の電気化学検出法は炭素酸のpKa測定法として確立し,その測定範囲がpKa (アセトニトリル中) で約7~17であることを示した.従前,気相酸性度GAの値で評価せざるを得なかった超強酸性炭素酸のpKaを液相中で初めて実測することに成功した.本法は,有機分子触媒や燃料電池材料の開発を支援する分析技術として有用であると考えられた.さらに,弱酸性物質の電気化学検出法をオンサイト分析へ展開するための基礎研究として,天然物試料の実分析への適用を図った.分析対象として生薬 ゴミシ(Schisandra chinensis Baillonの果実)を扱い,キノンのボルタンメトリーを活用して,ゴミシに含まれる有機酸などの酸の総量(酸度)が定量できることを明らかにした.本法で求めたゴミシの酸度と0.1 mol/L NaOHを用いる中和滴定で求めた酸度は,よく一致した.ゴミシの品質管理が酸度を指標にして行える新知見を得るとともに,本法がオンサイト分析へ充分適用可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は,当初計画していた超強酸性物質の電気化学検出法を開発し,これを炭素酸のpKa測定法として確立できた.この成果により,本法で測定可能な酸性物質の範囲はpKa (水中) で 約-5~6となり,強酸性側に大きく拡張することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,当初の計画通り,ビタミンK3の電解還元に基づく酸測定およびトコフェロールの電解酸化に基づく塩基測定が以下の1~2を分析対象とできるように,本法の拡張を検討する.さらに,生体試料,食品,環境試料を対象とした実分析を行い,開発した電気化学分析法の実用性と汎用性を明らかにする. 1.弱酸性物質:酸性が極めて弱い物質の電気化学検出法を開発し,血中薬物濃度測定用HPLCの検出部への適用を図る. 2.弱塩基性物質の弱酸塩:土壌の陽イオン交換容量測定への応用を図り,フィールドワークに適用できるセンサを開発する. また,オンサイト分析に適用可能な小型センサと使い捨て型電極開発の基礎検討として,プロトタイプの製作とその性能評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に計画したオンサイト分析用のセンサ開発とその実用性を評価する実験は,コロナ禍の外出自粛によりフィールドワークなどが制限されると判断し,令和3年度に実施することとした.従って,翌年度分として請求した助成金は,オンサイト分析用のセンサ開発に必要な電極材料および電子部品の購入に充当する.
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