研究課題/領域番号 |
18K05184
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
森田 耕太郎 東邦大学, 理学部, 准教授 (70396430)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カーボンナノドット / 発光 |
研究実績の概要 |
カーボンナノドット (CND) は有機化合物や炭素材料を原料として、加熱分解法や電解法などの多様な合成方法で得ることができる。CND について発光特性などの基礎検討や応用例が報告されているが、CND の原料および合成方法と得られた CND の発光特性の関連性について系統的に取り組んだ研究例は少ない。また、CND 発光強度は既存の半導体ナノドットなどに比べるとやや劣っており、発光量子収率にして 20 % 程度である。これに対して、原料として窒素や硫黄を含む有機物から合成された、ヘテロ原子がドープされた CND では、発光量子収率が向上することがここ数年の研究から認めラル用になった。そこで、本研究では原料の元素組成と得られた CND の発光特性の関連性に着目するとともに、窒素や硫黄の代替となるヘテロ原子の探索に取り組んだ。CND の合成には、原料比の制御が容易であり、反応操作から精製処理まで比較的短時間で対応できる、電気炉加熱分解法とマイクロ波照射法を採用した。CND の主原料として、高純度の試薬が入手可能であり、その元素組成が明確なグルタミン酸を選択した。これにより、種々の合成原料組成から合成したホウ素をドープした CND の吸収および発光スペクトル測定に基づいた発光特性評価に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルタミン酸を主原料とし、これにドープするホウ素源としてホウ酸またはフェニルボロン酸を選択し、マイクロ波照射法によってカーボンナノドット (CND) を合成した。ホウ酸は一般的な有機化合物に比べて熱分解温度が高いため、従来の CND の合成で反応容器として用いられてきたテフロン耐圧容器の使用温度(260 °C で溶解)範囲内で CND を生成させることができなかった。そのため、ホウ素含有カーボンナノドットの合成では、より反応効率が高く短時間で加熱分解処理が可能なマイクロ波照射法に変更した。原料の合計重量を 1 g として、グルタミン酸とホウ酸の混合比率を変化させた一連の原料からそれぞれ CND をマイクロ波照射によって合成した。得られたホウ素がドープされた CND の発光強度は(励起波長 328 nm, 発光波長 378 nm)NaCl 0.001-2.5 M および pH 4.5-9.5 の範囲でほぼ一定を示した。原料中のホウ酸含有率増加に伴い発光量子収率は増大し、原料中のホウ酸含有率 50 % で発光量子収率が 42 % を示した。一方で、原料中のホウ酸含有率 90 % では発光量子収率が 3.7 % まで減少した。この結果からホウ素ドープは、CND の発光量子収率に与える影響として、これまで報告されている窒素および硫黄ドープと同程度の効果が得られることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度グルタミン酸とホウ酸を原料としてマイクロ波照射法によるホウ素ドープ CND の合成法を確立し、原料混合比による発光特性の影響についての指針を得た。しかしながら、ホウ酸の熱分解温度の高さと偏った元素組成のため、より広範な原料組成比や温度条件での CND 合成が難しいことも明らかとなっている。そこで、ホウ素源をフェニルボロン酸にすることで、混合原料中の炭素含有比率について検討するとともに、電気炉加熱分解法を採用することで反応温度と反応時間の影響について取り組む。これと並行して、リンを含有した CND の合成法の確立と、CND の発光特性におよぼすヘテロ原子としてのリンの効果について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】CND の合成に使用するテフロン容器、遠心ろ過デバイス、スペクトル測定に使用する石英キュベットなどの消耗品が、想定していたよりも更新間隔が長かったため、消耗品購入のための物品費が抑えられたため、残額を次年度使用額とした。 【使用計画】過度の消耗品在庫を所持することを避け、研究進捗状況と照らし合わせて適切な数量を購入する。研究の進行によって必要に応じた新たな物品の購入が発生することも考慮しつつ研究費を執行する。
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