研究実績の概要 |
本申請課題では、標的タンパク質と結合するフッ素化合物(リガンド)の検出において、フッ素原子(19F)をマーカーとして選択的に検出可能な核磁気共鳴法(NMR)の開発を目指した。分子間相互作用に関与するリガンド中の部位を、高周波観測核であるフッ素原子に着目して検出し、原子レベルで解析する分析手法である。 タンパク質にはヒト血清アルブミン、フッ素化合物にはジフルニサル、フレロキサシンを使用し、(1)リガンドのみ、(2)リガンド+標的タンパク質、の2種類の試料を調製した。試料(2)について1H照射-1H検出飽和移動差(STD)スペクトル、およびエレクトロスプレーイオン化質量分析法により複合体形成を確認した後、1H照射-19F検出STDにより、結合するリガンド中のフッ素核を直接検出する。軽水溶液(95% H2O+5% D2O)においても、レシーバーゲインの飽和を気にせずに選択的検出が可能という利点を有する。 高感度化の観点より、タンパク質を選択照射する1Hパルス、およびパルス間の待ち時間の検討を行い、リガンドシグナルが存在しないメチル基領域の照射(0.4-2.0 ppm)では、ガウス、およびQ3パルスの使用によりSN比が向上し、高感度化に繋がった。また、ガウスパルスを繰り返し回数を調整し、プローブへの負荷を減らす条件で、タンパク質の選択照射時間を徐々に長くし、19Fシグナル強度の増加を確認し、測定条件の最適化を行った。照射時間とシグナル強度の相関より、19Fが結合に関与するかを相対的に解析した。 19F-縦緩和時間(T1)をタンパク質1H選択照射のオン/オフでそれぞれ測定し、変化を観測した。DIRECTION法とよばれる手法を19Fに応用した。上述した1H, 19F-STD法と19F-DIRECTION法を併用し、分子間相互作用をより総合的に評価するシステムの構築を行った。
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