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2019 年度 実施状況報告書

パーフルオロアルキル基の特性を利用する新規ハイブリッド化合物の合成

研究課題

研究課題/領域番号 18K05198
研究機関金沢大学

研究代表者

本田 光典  金沢大学, 物質化学系, 准教授 (60242533)

研究分担者 山口 孝浩  金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90272947)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードイオン液体 / フルオラス / ハイブリッド材料
研究実績の概要

本研究の目的は、有機薄膜太陽電池の発電層作成の溶剤やドラッグデリバリーシステムの媒体として、一つの分子中にパーフルオロアルキル鎖と炭化水素鎖をもつ新たなハイブリッド材料を合成すること、二つの炭素鎖長の増減によりフルオラス性、親油性、親水性を調整し、この材料がイオン液体、界面活性剤、または相間移動触媒としての特性を発現するよう分子設計を行うことにある。
本年度はパーフルオロアルキル基を有するイミダゾリウム塩、およびこれらを炭素鎖で連結したジカチオン型塩の合成と機能付与のためのチューニングを計画した。
イミダゾールを出発原料とし、2つの窒素原子上にパーフルオロアルキル基を導入したヨージド塩を合成した。一方、2つのイミダゾール環をドデシレン鎖で連結したビスイミダゾールを調製し、その窒素原子上にパーフルオロアルキル基を導入したヨージド塩を合成した。それぞれのメタセシス反応により様々なアニオン部をもつイミダゾリウム塩類を合成したが、いずれも融点が高いばかりか、パーフルオロ溶媒への溶解性が低く、フルオラス溶媒としての性能を満たさなかった。そこで、ケイ素原子上にパーフルオロアルキル基を3つ有するシリル基をもつタグを調製しイミダゾールやビスイミダゾールの窒素原子上に導入した塩を合成し、メタセシス反応により様々なハイブリッド化合物群を合成した。これらはいずれも常温常圧で液体であり、高いフルオラス性を示した。同様にビスピロリジニウム塩の合成においてもパーフルオロアルキル基を3つ有するシリルタグを窒素原子上に導入するとフルオラス性の高いイオン液体が合成できた。計画とは異なり界面活性剤等への応用的利用を検討できなかったものの、ここまでの研究で、通常の炭素鎖とフルオラスタグをもち、高いフルオラスを発現するイオン液体の合成に成功しており、界面活性剤または相間移動触媒への応用の下地はできた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度における本研究の目的は、ケイ素原子上にパーフルオロアルキル基を3つもつシリル基を2つ有するイミダゾリウム系およびジカチオン型のビスイミダゾリウム系イオン液体を合成し、その物性測定を行い、フルオラス性を調整すること、および得られた知見を利用してイミダゾリウム以外のジカチオン部をもつフルオラスイオン液体を合成し、多様なフルオラス性および有機基の官能性をもったハイブリッド材料のライブラリを構築することにある。
イオン液体の合成においては、ケイ素原子上にパーフルオロアルキル基を3つ有するシリル基をもつタグを調製しイミダゾール環の窒素原子上へ導入することにより、高いフルオラス性をもつ新規イオン液体の合成に成功した。一方、上記研究で得た知見をもとにカチオン部がジピロリジニウム系の高フルオラスイオン液体の合成を達成した。有機薄膜太陽電池の発電層構築への応用を目目指した多様なカチオン部をもつライブラリーの構築は実現しつつあるものの、実用化のための大量合成が今後必要である。
上述の様に高フルオラスイオン液体の開発に時間と労力が費やされ、応用面において遅れをとっているが、ハイブリッド型イオン液体の分子構造と融点、溶解性およびフルオラス性の相関の解明も進行しており、昨年度に検討を予定していた界面活性剤への応用に目処が立っている。その結果、全体として概ね予定通りと考えた。

今後の研究の推進方策

30, 31年度に得られた知見をもとに、ケイ素原子上にパーフルオロアルキル基を3つもつシリルタグと通常のアルキル長鎖をそれぞれ導入したイミダゾリウム系、ピロリジニウム系、イミダゾリウム系イオン液体を合成し、ハイブリッド材料のライブラリを増強する。また、計算化学等の手法を駆使してイオン液体の分子構造とフルオラス性の相関の解明をさらに進め、フルオラス性向上を指向したイオン液体の分子設計を行うとともに界面活性剤への応用も検討する。上述の方法で合成するフルオラスイオン液体を用いて、これまでに本研究者らが開発したパーフルオロアルキル基をもつポリチオフェンとフラーレン誘導体の混合物を溶解(膨潤)することが可能となり、真空蒸着により有機薄膜太陽電池の発電層を合成することができる。得られた発電層の表面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認するとともに、これを用いて作成した太陽電池の開放電圧、短絡電流密度、フィルファクタを測定し、エネルギー変換効率を明らかにして、発電層のモルフォロジー制御の評価とそのフィードバックによるイオン液体の分子構造の改善が、現実的に可能となるであろう。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Synthesis of Novel Fluorous Imidazolium Ionic Liquids2020

    • 著者名/発表者名
      Mitsunori Honda, Ryu Nakajima, Ko-Ki Kunimoto, and Masahito Segi
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 101 ページ: 104-115

    • DOI

      10.3987/COM-19-S(F)17

    • 査読あり
  • [学会発表] 新規ハイブリッド材料の開発を指向したフルオラスアンモニウム塩の合成2019

    • 著者名/発表者名
      三枝千紘, 高桑和樹, 本田光典
    • 学会等名
      2019年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] パーフルオロアルキル基を有するシリルチオフェン類の合成とその利用2019

    • 著者名/発表者名
      金子湧貴, 宮島亮介, 林 知宏, 山口孝浩, 本田光典
    • 学会等名
      2019年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] ポリチオフェンの過酸化状態による電気化学的失活とポリマー電析のための役割2019

    • 著者名/発表者名
      堀アンリ, 山口孝浩, 本田光典, 中野正浩, 高橋光信
    • 学会等名
      2019年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] チオフェン誘導体のポリマー電析を容易とする混合溶媒による電解重合法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      北野汰一, 山口孝浩, 本田光典, 中野正浩, 高橋光信
    • 学会等名
      2019年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] パーフルオロアルキル基を有するチオフェントリマーの電解重合とその pn ドープ特性評価2019

    • 著者名/発表者名
      黒川侑摩,山口孝浩,宮島亮介,本田光典,中野正浩,高橋光信
    • 学会等名
      2019年 電気化学北陸支部秋季大会
  • [学会発表] 新規ハイブリッド材料の開発を指向したフルオラスアンモニウム塩の合成2019

    • 著者名/発表者名
      三枝千紘, 本田光典
    • 学会等名
      第6回物質化学専攻フォーラム
  • [備考] 分子機能解析化学研究室Webページ

    • URL

      http://kohka.ch.t.kanazawa-u.ac.jp/lab7/index.html

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公開日: 2021-01-27  

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